新しい教皇が誕生しました。

ローマ時間5月8日の夕刻、システィーナ礼拝堂の煙突から白煙が上がりました。聖ペトロ大聖堂の鐘が打ち鳴らされ、コンクラーベにおいて第267代のローマ教皇が決まったことが知らされた瞬間でした。
四回目の投票で選出されたのは、ロバート・フランシス・プレヴォスト枢機卿、69歳です。レオ十四世と名乗った新教皇は、最初の祝福を送るために、サン・ピエトロ大聖堂のバルコニーに現れました。人々が「ビバ、イル・パーパ」と叫ぶ中、教皇が最初に発した言葉は「あなた方に平和があるように」でした。復活したキリストの最初の挨拶を引用したのです。さらに「私たち全員が神のみ手のうちにあります。ですから恐れることなく、一致して神と共に互いに手を取り合って、前に進んでゆきましょう」と述べました。また、自らがアウグスチノ修道会士であることから聖アウグスチヌスの言葉も告げました。「皆さんと共に私はキリスト信者で、私は皆さんのための司教です」そして、教会が苦しんでいる人に寄り添うことを願い、「アベ・マリアの祈り」を唱えるよう聴衆に呼びかけました。
レオ十四世は、1955年にアメリカ・シカゴで生まれました。母親がスペイン系で、父方はフランスとイタリアにルーツを持つということです。三人兄弟の末っ子として育ち、二人の兄が警官や泥棒の真似をして遊ぶ中、いつも神父役を演じていたそうです。家族は「いつか教皇になるよ」と、よくからかっていたそうです。長兄のルイさんは「ユーモアのセンスがあり、頭が切れる」と言い、次兄のジョンさんは「シカゴ・ホワイトソックスのファンだ」と明かしました。
教皇フランシスコについて、「私たちを祝福してくれた常に勇敢だった声が今も耳に響いている」と語るレオ十四世は、1982年にアメリカで司祭になりましたが、20年近くペルーで布教活動をし、市民権も得ています。社会から疎外されたコミュニティーに関わり、つながりを築いてきた人物として知られ、ある意味ラテンアメリカ出身の枢機卿とも捉えられていました。そういった点が彼を枢機卿に任命した教皇フランシスコと似通った見解を持つと考えられ、改革の継続を支持するのだろうと感じます。また教会の伝統も大切にするというバランス感覚を持ち合わせていることが保守派にも支持された要因のひとつと言われています。教皇名に選んだレオについても新教皇の決意が感じられます。「労働者の教皇」として知られるレオ十三世は、1900年代初頭、社会の変革期にあって、労働者の権利や公正な賃金についての回勅を出し、尊敬された人物です。
混沌とした世界の中で国際秩序を安定させることが期待され、ローマ教皇の言動は今さらに注目されています。私たちも教皇レオ十四世とともに祈り、歩み続けて参りましょう。
文責:斎藤菜穂子