フランシスコ教皇は8月末のアンジェラスの祈り集いの際、「悲しいニュースが届きました」と、ミャンマー西部ラカイン州でイスラム教少数民族ロヒンギャの武装集団と警察・軍が衝突し、百人以上が亡くなったことを憂い、ロヒンギャへの迫害を終わらせるよう訴えました。そして、翌日には今年11月27日から12月2日にかけて、ミャンマーとバングラディッシュを訪問すると発表されました。

ミャンマーは「仏教国」で、2014年の国勢調査では総人口5142万人、仏教徒が9割を占めます。キリスト者は4%(カトリック信徒は1%)。2015年にヤンゴンのチャールズ・マウン・ボー大司教が同国初の枢機卿に任命されました。バングラデシュは総人口1億6千万人。イスラム教徒が9割の「イスラム国」。キリスト者は1%(カトリック信徒は0.3%)です。フランシスコ教皇は昨年11月にダッカのパトリック・ドロザリオ大司教を同国最初の枢機卿に任命しました。

上記両国は、ミャンマー西部ラカイン州を中心に百万人以上が居住するイスラム少数民族ロヒンギャの処遇をめぐって対立しています。これまでに多くのロヒンギャがミャンマー当局の迫害を理由にバングラデシュに避難しています。教皇は声明で「宗教的少数者が迫害を受けている。ロヒンギャの兄弟たちがひどい目に遭っている。私は全面的に、ロヒンギャの人たちの側に寄り添っている。彼らを救済し、善意の人々が彼らを助けるよう促し、彼らに完全な権利が与えられるよう、全員で主に願おう」と呼びかけられました。

これまで、キリスト教とイスラム教の対立が問題視されることが多かったのですが、仏教とイスラムの間でも同様な問題が起きるのです。結局、人間の権力欲、身勝手さが問題なのであって、宗教間問題というよりも、多数派が常に少数派を圧迫する構造が根っこにあるわけです。

今日、9月24日は「世界難民移住者の日」です。かつて、教皇庁の難民移住者評議会議長であった浜尾枢機卿様が口癖のようにおしゃっていた、「イエス様も聖家族も難民だったんだよ」という言葉を今一度思い出したいものです。

主任司祭 松尾 貢

LINEで送る