正月早々、多摩教会所属の旧知の信徒の方から手紙をいただいた。教皇様が新年に“「焼き場に立つ少年」の写真をカードにして広めなさい”と勧めたカードはどこで購入できますか、という内容だった。

バチカンの機関紙によれば、教皇がカードにするのを望んだのは、米国の従軍カメラマン故ジュ・オダネル氏が終戦直後、長崎で撮影した「焼き場に立つ少年」の写真。少年は原爆で亡くなった弟を背負い、火葬の順番を待っている。オダネル氏のカメラはこの少年をまっすぐに捉え、想像を絶する悲劇を背景に尊厳を保つその姿をリアリズムをもって写し出している。撮影から80年近く経った今も人の心を揺さぶるこの写真。教皇は大きな印象を刻まれ、これをカードにすることを希望された。写真が印刷されたカードの下に、教皇は「・・・戦争がもたらしたもの」との短く重い言葉を添えて署名をされた。スペイン語による写真説明には、弟を失なった尊厳ある苦しみを強調し<血がにじむまでに噛み締めた唇の表情から苦しみが感じられる>と記されている。

上記の記事を目にして、年末に切り抜いておいた新聞記事を思い出した。12月29日毎日新聞『金言』の西川恵客員編集員のコラム記事だ。

これまでバチカンは核廃絶を掲げながらも「廃絶までは核攻撃抑止のため最小限の核保有は倫理的に認められる」と是認してきた。

教皇フランシスコは2013年に教皇就任以来、従来の立場の再検討を指示。2017年7月の核兵器条約禁止条約の採択、10月のノーベル平和賞に核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)の受賞決定と大きなうねりが起き、11月バチカンで開催された「核なき世界」についての国際シンポジウムでの教皇発言があると指摘している。その教皇発言とは、「核保有が間違った安全保障観を作り出している」と核抑止戦略を批判。「貧困との闘い、教育・環境・健康の保証、人権の増進など人類が直面している諸課題も、核なき世界の実現という課題の前には最優先課題ではない」とまで言い切った、と評価している。さらに、西川氏は教皇は2018年、日本を公式に訪問し、広島・長崎から世界に向けて「核廃絶の訴え」をすることになるのではないか、昨今の教皇の言動をみているとその機は熟しているように思う、との大胆な予測もしている。

主任司祭 松尾 貢

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