10月1日はリジューの聖テレジアの記念日です。15日は大聖テレジアの記念日。この二人の共通点は、跣足カルメル会のシスターであると同時に教会博士でもある点です。

教会博士とは、聖なる生活を送り、正当な教え、優れた学識を有した著述家に、教会によって正式に付与される称号です。初期キリスト教の教義を確立した教父たち、スコラ哲学・神学を集大成した聖トマス・アクイナス、十字架の聖ヨハネなどの神秘家と錚々たるメンバーが名を連ねています。現在34名を数えます。ながらく男性だけでしたが、1970年、教皇パウロ六世が大テレジア(1515~82)とシエナの聖カタリナ(1347~80)を、さらに1997年ヨハネ・パウロ二世が小さきテレジアを3人目の教会博士として宣言しました。リジューで8年間の観想生活をおくり、24歳の若さで帰天した学歴無縁の女性が教会博士の称号をおくられたということは、神様から与えられた知恵に活きたということでしょう。

四人目の女性教会博士は12世紀のベネディクト会修道院長、ヒルデガルデ・フォン・ビンゲン(1098~1179)です。彼女は多くの点で大物でしたが、当時のマインツの聖職者たちを批判したせいで、正式な聖人の称号を得ていませんでした。彼女は教皇も王侯貴族も相手が誰であろうと、歯に衣着せずにその腐敗を批判するモラリストでした。2012年5月10日、教皇ベネディクト16世はついに彼女を正式な聖女として宣言し、28日に教会博士の称号を送ったのでした。ライン川沿いに生きた神秘家をドイツ出身のベネディクト16世教皇が教会博士と宣言したわけです。

彼女に今日的な意味でスポットライトが当たったのは50年ほど前のことで、ドイツの代替療法である自然療法家による再発見がきっかけでした。

 彼女の数ある著書の中に『自然界のさまざまな被造物の隠された諸体質の書』という本があります。その中で彼女は人間と宇宙全体の緊密な関係について語っています。エコロジーに力をいれている現在の教会にとって、彼女はますます重要な意味を持っています。ヨハネ・パウロ2世教皇は彼女について「幼い時から神の恵みを一身に受け、神学や医学、音楽など様々な芸術の神秘に通じ、多くの著書によって贖罪と創造の関係を明らかにした者」と説明されました。

主任司祭 松尾 貢

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