大阪の星光学院に私は長く勤めました。地下鉄で10分もしない所でカトリック作家の今井美沙子さんが、ご主人と「絵画教室」を開いていました。私も何度か自宅までお邪魔しましたし、教職員の研修会・聖書教室の研修会と講演を快く引き受けて下さり、いろいろとお世話になりました。そんなわけで、彼女が書いたものはよく読みました。彼女の「この指とまれ」の中にこんな話があり、興味深く読みました。

絵画教室では、時々「スケッチ会」が祝日に開かれます。もちろん家族同伴で、ピクニックを兼ねて三世代が参加したりすることもあります。そんな時、作家の今井さんですから「家族の人間関係」に興味をもって見ることになります。そして、各家族の違いの一番よく現れるのが食事の時です。「お弁当の中身」というより食事前後の家族の姿なのです。食事の前に手を合わせたり、食事の後に手を合わせるのかの違いはあっても、お父さんかお母さんが強い家族では、例えばお母さんが「準備ができました。さぁ」と声をかけると、全員が合掌して「いただきます!!」と元気な声が返ってきて、食事が始まります。それが子供の強い家族の場合は、全然ダメで、お母さんが準備し終わらないのに、自分の好きなものに手を出したり、兄弟で取り合ってお皿をひっくり返したりしてしまい、目をそむけたくなる状況が出現したりします。

学校での給食の時、食べる前に合掌し感謝することにクレームをつけた保護者がいたということが新聞に載っていました。正直言ってビックリしました。そんな親に育てられた子は、「親にも感謝することのない」子供になるのではないかと他人事ながら心配になりました。もしそんな人ばかりの日本になってしまったら、20年後、30年後の日本はなんて淋しく味気のない国になってしまうのだろうか、心配になりました。

もう一度マザー・テレサの言葉です。
「家族が共に祈るならば、家族の一致は保たれます。その家族は互いに愛し合うでしょう。」

主任司祭 田中次生
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