神田の岩波ホールで「大いなる沈黙へ-グランド・シャルトルーズ修道院」という映画が上映中です。先日鑑賞なさった方の話によると、平日にもかかわらず11時30分開始の部も15時からの部も満員だったそうで、“静けさと聖なるものに渇いている方が多いのでしょうか”と印象を述べておられました。実はこの映画、2006年ヨーロッパの各映画祭で数々の賞を受賞、話題となった作品です。

私事になりますが、2008年頃イタリア出張の際、ローマのお店でこの映画のDVDを買い求めました。イタリア語の表紙だったので、お店の人に「英語版はないの?」と聞いたら、店員に「Tutto silenzio.」と言われてしまいました。セリフがないから何語版もないだろう、というわけです。

この修道院はカルトゥジア修道会です。日本にはありません。11世紀末に聖ブルーノによって仏国グルノーブルの近くのグランド・シャルトルーズに創立されました。「カルトゥジア Cartusia」の名称はフランス語の「シャルトゥルーズ Chartreuse」に由来します。カルトゥジア修道院は、イタリアでは Certosa 、英国では Charterhouse と称されてきました。

日本の有名な観想修道会、厳律シトー会(トラピスト)との違いはどこにあるのでしょうか。それはカルトゥジア会は隠遁的性格が強いという点です。

基本的には一人で祈り、働き,食事をとり、生活します。日曜日と祝日のみ共同食堂で昼食と夕食をとり、それ以外は各修室での食事。会話も日曜日と祝日、修道院総会時のみ許され、それ以外は沈黙。

ちょうど、エジプトの聖アントニウスの隠修士的生活と聖パコミウスの共住生活をミックスしたものと考えることができます。中世以来、次のようなラテン語の格言が知られています。

「Cartusia numquam reformata, quia numquam deformata!」( カルトゥジア会は一度も改革されたことがない。なぜなら一度も堕落したことがないから)。十字架の聖ヨハネがカルメル会からカルトゥジア会に移るのを熱望していたのを、大聖テレジアが説得し、男子カルメル会の改革に挑ませた話は有名です。岩波ホールでの上映は8月22日までです。ご覧になってみませんか。

主任司祭 松尾 貢
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