聖ベネディクトと黒い烏(からす)

アイキャッチ用 松尾神父の今週の糧

「私が卒業したのは米国のベネディクト会の大学で、“黒い烏”のマークがよく使われていましたが、どんな意味があるんですか?」。先日、ある方から聞かれた質問です。側にいた人たちは、「黒い烏って縁起でもない」という人。「いや、“やたがらす”のようにいい意味もあるよ」。「ふつうは意地の汚い人に使うでしょう」などの反応がありました。

さっそく調べてみると、当教会所属の坂口昂吉氏著『聖ベネディクトゥス』(南窓社)の表紙にパンを口にした黒い烏が載っており、本文に次のような記述がありました。

“スビアコの静かな、幸せな生活が破られる時が来た。この近くに教区を持つ、フロレンティウスという在俗司祭がいた。ベネディクトゥスに対して、なぜか激しい憎悪を抱いていた。この司祭の憎悪の原因はよくわからない。単にベネディクトゥスの名声を妬んでいただけなのか、あるいは自分の生活が非難されている、と思いこんだのか。いずれにせよ、悪魔にそそのかされていたのであろう。彼はベネディクトゥスを批判し、ベネディクトゥスを訪れる人々を妨げようとした。さらには、ベネディクトゥスを亡き者にしようと企てたのである。

当時のキリスト教徒の間では、祝福したパンを、信仰と愛の一致の象徴として、知人に贈る習慣があった。フロレンティウスはこの習慣を悪用して、毒の入ったパンをベネディクトゥスに贈ったのである。しかし、ベネディクトゥスはこれを察し、毒入りパンであることを見抜いた。そして、毎日彼から餌をもらいに飛んでくる烏に、そのパンを人に見付けられない所へ持って行って捨てなさい、と命じた。烏はしばらく躊躇していたが、やがてそれをくわえて飛び去った。しばらくして戻ってくると、ベネディクトゥスからいつものように、パン屑をもらって食べたという”

聖ベネディクトのメダイの表には、右手に十字架、左手に会則を持つベネディクトが描かれています。「聖なる師父ベネディクトの十字架」というラテン語が周囲に刻まれています。十字架の右下にはカラスがいます。上記のエピソードを刻んだものです。

師父聖ベネディクトのモットー「祈れ、そして働け」を旨に、師走を過ごしてまいりましょう。

主任司祭 松尾 貢


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