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​『守教』、吉川英治文学賞受賞

コムニオ2月号で斎藤菜穂子さんが推薦図書として取り上げた帚木蓬生著『守教』(新潮社刊)が今月初め、吉川英治文学賞を受賞しました。受賞を伝えるニュースには、“隠れキリシタンの魂の叫びが甦る! 慟哭の歴史巨編”という見出しが書かれていました。

福岡県南部、小郡(おごうり)市出身の著者は、これまで筑後川水利事業に命をかけた五庄屋の物語である『水神』、圧政にあえぐ農村と医師の姿を描いた『天に星 地に花』を世に出していましたが、それらに続く「久留米藩三部作」の3作目にあたる『守教』を昨年9月に発表しました。著者は中学生時代、福岡県大刀洗町の田園地帯に立っている赤レンガ造りの今村カトリック教会の側を自転車で通りながら、「何でこげな立派な教会があるとじゃろ」と、不思議に思っていたといいます。半世紀余りたって、天主堂建設につながるこの地のキリスト教信仰史を大河小説で見事に描き出しました。それが栄誉ある文学賞を受賞するとは私たちカトリック者にとっては実に嬉しい限りです。

著者はキリスト者ではありません。しかし九大医学部卒業後、仏国の病院神経精神科での2年間の研修体験、南仏のカタリ派異端を扱った『聖杯の暗号』、女子パウロ会から出した『むらさき色の滝』『つなみとゴンとコン』という2冊の絵本の刊行。2015年9月ルルドで開かれた医学会に、小倉金曜会のメンバー9名の一員として参加し、ロウソク行列にも参加した体験を持ち、その時の記録論文「聖地ルルドの医学検証所と患者受け入れ病院を訪ねて」を本名(森山成彬)の名で「臨床精神医学」第45巻第8号に発表しています。『守教』執筆にあたり、ザビエルから明治初期に至る3百年に関する関連文献を読みこんだことからも、著者のキリスト教理解の広さと深さを伺い知ることが出来ます。

今村は戦国期のキリシタン大名大友宗麟の領地でした。『守教』の中で宗麟は、今村など約20ヵ村を統べる大庄屋に家臣の右馬助を任じ、“小さなイエズス教徒の王国を打ち立てよ”との願いを託します。その後の禁令や厳しい迫害の嵐の中で右馬助の子孫や領民の目を通して、信仰を守り続けた「小さな王国」の3百年が描かれています。皆様もぜひ、ご一読なさってみてください。一押しの感動歴史小説です。

主任司祭 松尾 貢

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