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​ラルシュ共同体創立者ジャン・バニエの帰天

ジャン・バニエの葬儀が5月16日、フランス北部トロリー・ブレイユで執り行われました。

障がいのある人とない人が共に支え合いながら生活する共同体「ラルシュ(箱舟)」の創始者で、カトリック思想家であるバニエは5月7日、90歳で帰天しました。葬儀ミサは、ラルシュの霊的指導にあたるレンヌ大司教が司式し、テゼ共同体のブラザー・アロイスや様々な国の人が参列。フランシスコ教皇は、次のようなメッセージを送りました。

「神はキリストを介して、私たちのすべての弱さをご自分に引き寄せられ、ジャン・バニエはそのキリストと一致していきようとしました。人びとに拒絶されがちな最も弱い人びとが、宗教や社会的立場を超えて兄弟姉妹として認められ、受け入れられるよう、彼は尽力しました。主がラルシュの大きな素晴らしい家族を守って下さいますように。どんな障がいにもかかわらず、一人ひとりが神に愛され、兄弟愛と正義と平和の世界に参与するよう招かれていることを示しながら、ジャンの福音的直観に倣って、すべての共同体が祝祭と赦し、憐みと喜びの場所であり続けることができますように」

バニエといえば、ヘンリ・ナウエンを思い出します。ナウエンにとって、ジャン・バニエとラルシュは新しい発見でした。ここで、彼は、長年自分が擁護し説教してきた教義が実行に移されるのを見たのでした。若いボランティアが自分を低くして人に仕える態度と連帯、聖体中心主義、社会の最も疎外された人びとを受け入れる心と、忘れられた人びとの中に働かれる神の恵みでした。ナウエンによると、ラルシュはイエスの真の精神と山上の垂訓の霊性を生きている共同体でした。

“ラルシュでの生活は、身体障がい者のためだけでなく、ナザレの拒絶された人、イエス・キリストの中に示される生命の神のためにも、愛の内に築かれているのです”(『The Road to Daybreak』)

ノートルダム、イェール、ハーバードの各大学で長年教鞭をとった後、1986年から急逝する96年までの晩年の10年間を過ごしたカナダのトロント郊外の「ラルシュ・デイブレイク」での生活は、彼にとって極めて意義あるものでした。そのことは、彼の著書『アダム――神の愛する子』に見事に描かれています。

主任司祭 松尾 貢

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