昨年9月に享年75歳で帰天した樹木希林さん。彼女に関する本が、書店売り上げの上位に数冊並んでいます。彼女が主演した映画『あん』や『日日是好日』を2度も映画館で鑑賞したファンとしては気になるところ。さっそく、先日書店で買い求めました。さすがというべきか、珠玉の言葉が並んでありました。
- 不自由なものを受け入れ、その枠の中に自分を入れる。年を取るというのは、そういうことです。
- 年を取るって、絶対に面白いことなの。若いときには当たり前だったことができなくなる。それが不幸だとは思わない。 そのことを面白がっているんですよ。
- 私はすべてのものに対して、絶対こうでなければならないという鉄則はないと思っている。たとえば私の顔。これはミスして出て来ちゃったわけですよ(笑)。でもこのミスを活かそうと思ってやってきた。
- 私のことを怖いという人もいるみたいだけど、それは私に欲というものがないからでしょう。欲や執着があると、それが弱みになって、人がつけこみやすくなる。
- 私の中に、愚痴って言葉がないのよ。
- 自分の判断を超えるものに対して、拒否したり溺れたりしないで、もう少し自然でいたいなあと思うのね。だって、それほど私は強くも弱くも、偉くも駄目でもないんだもの。
- えっ、私の話で救われる人がいるって? それは依存症というものよ、あなた。自分で考えてよ。
- 謝れば逃げ切れるって思ってるみたいだけど、みんな逃げ方が下手よね(笑)。謝るなら心から謝る。謝らないなら謝らない。
- 本物だからって 世の中に広まるわけじゃないのよ。偽物のほうが広まりやすいのよ。
嬉しかったのは、樹木さんの好きだった詩として、ホイヴェルス師著『人生の秋に』に掲載されている〈最上のわざ〉が紹介されていたことです。最初の部分をご紹介しましょう。
“この世の最上のわざは何? 楽しいことで年を取り、働きたいけれども休み、しゃべりたいけれども黙り、失望しそうなときに希望し、従順に、平静に、おのれの十字架をになう――。”
主任司祭 松尾 貢