洗礼を受ける前の面談の時、洗礼名(霊名)は何にするかを相談をします。

今年の復活徹夜祭に洗礼を受けた方九名の中に、息子さんがサレジオ学院を卒業なさったお母様がいらっしゃいました。その方はフランシスコ・サレジオという聖人が大好きでその名前を希望していました。「サレジオは男性ですので、サレジオと一緒に『訪問会』という修道会を創立した聖女フランソワ・ド・シャンタルはどうでしょう」と勧めました。でも、やはり柔和の聖人であるサレジオに魅力を感じるのでぜひということで“サレジオのフランシスカ”にすることになりました。サレジオ(正式にはフランスのサヴォア地方のサールSale)は地名ですので、名前の方を男声形ではなく女性形にしたわけです。

そのとき、思い出したのが現在“ヒフミン”の愛称で将棋界のみならず、茶の間の人気者になった加藤一二三さんの娘さんのことでした。娘さんであるSr.加藤美紀はシャルトル聖パウロ会のシスターで、現在、仙台白百合大学の准教授として、教育宣教に精力的に活動なさっています。彼女が修道誓願を宣立したとき、下井草教会でドン・ボスコに親しんでいたこともあり、「ヨハネ・ボスカ」という修道名にしたそうです。ボスコはイタリア語で森という意味の苗字なので、名前の方のヨハネを女性形にしてヨハンナ・ボスコもしくはジョバンナ・ボスコとした方がよかったですね、と話したことがあります。

洗礼名は英語ではBaptismal nameまたはChristian nameともいわれ、受洗者が聖徳に励む模範とするため、また保護やとりなしを願って、証聖者や殉教者などの名前が付けられることが多かったわけです。プロテスタントによる宗教改革が聖人崇拝を拒んだことに対抗して、トリエント公会議では逆にこれを推奨し、『ローマ・カトリック要理問答』(1566)や『ローマ儀式書』(1614)では、洗礼名として聖人目録にある名を選ぶことを義務づけました。現行の『教会法典』においては、キリスト教的センスになじまない名前を避けるよう、両親や代父母、ならびに主任司祭に配慮を促していますが、洗礼名として聖人の名を選ぶ義務はなくなっています(855条)。例えば、“真理”や“愛”という名前は洗礼名としても十分使用できるというわけです。

主任司祭 松尾 貢

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