各地をめぐって弟子を指導していた俳諧師芭蕉が難波の地で病に倒れ、生涯を思い起こしつつ「旅に病んで 夢は枯れ野を 駆けめぐる」の辞世の句を残しています。先日帰天された教皇ヨハネ・パウロ2世は、世界の人々、特に若者と出会い、若者を引き付け、若者から慕われていましたが、若者への思いは最期まで忘れなかったようで、伝えられるところによると最後の言葉は若者に向けられた「わたしはあなたがたを探してきました。今、あなたがたはわたしのところに集まってくれました。あなたがたに感謝します。」であったそうです。
復活節第4主日には、毎年ヨハネ福音書10章から「よい牧者」の部分が読まれます。それに関連して、この日を「世界召命祈願日」と定め、特に司祭の召命を願って祈る日となっています。
亡くなられたヨハネ・パウロ2世教皇様は、この日のために前もって「沖に漕ぎ出すように呼ばれています」という若者の挑戦を促すタイトルのメッセージを残され、若者に心からの最後の呼びかけをされています。
その中で次のように指摘されます。「『沖に漕ぎ出しなさい』。他者とのかかわりをもちたくないという精神が蔓延している現代において、困難な状況に直面したとき、キリストが命じていることはとくに大きな意味をもっています。『沖に漕ぎ出す』ための最初の条件は、祈りの心を深めることです。それはみことばを毎日聞くことによって養われます。キリスト者としての生活が本物かどうかは、その人の祈りの深さによって判断されます。」
そして、付け加えています。「キリストに心を開く人はだれでも、自分の存在の神秘を悟るだけではなく、自分の召命の神秘をも悟ります。こうしてその人は、豊かな恵みの実を結ぶのです。最初の実である洗礼の恵みから始まって、完全な愛に満たされるまで続く霊的旅路における聖性の成長です。聖なる司祭や、神への奉仕に完全に奉献された人々が、今日も必要とされていることを忘れないでください。」
キリストの言葉にはぐくまれた深い祈りは、「沖に漕ぎ出す」勇気をもたらし、召命の高みまで進ませるものです。そして、すべての信者はそれを後押ししながら祈るのです。
教皇様はマリア様に信頼をこめて祈りながら、メッセージを締めくくります。
聖なるおとめ、あがない主の母、神と隣人への道を確かに導いてくださるかた
主のことばを心の深みで思いめぐらしておられたかた
若者たちが主の呼びかけに寛大にこたえるために助けられるよう、
わたしたちの家族と教会共同体を、母であるあなたの取次ぎによって支えてください。