「今日“2003年4月7日”は誰の誕生日なのか、知ってる人はいますか?」の私の質問に170名の学生たちの間にどよめきが起こりました。「そうです、今日は“鉄腕アトム”の誕生日です。流石に、高専に入学希望するだけのことはあります。それでは次の質問です。皆さんは、欧米のロボット製作と日本のロボット製作のコンセプトの違いが分かりますか?」の質問に、“えっ?”と怪訝な顔をする学生もいましたが、ほとんどの学生が、“何でこんな質問をするのだろう”という顔に変わりました。今から4年前のサレジオ高専の入学式での「校長式辞」の時でした。私は新聞等から準備した話をしました。

「欧米の場合、“ロボットは人間の奴隷”がその製作のコンセプトにあります。だからいわゆる3Kを人間に代わってするのがロボットなのです。しかし日本の場合は違います。日本のロボットは人間の奴隷ではなく、“人間のパートナー”なのです。したがって“子守をするロボット”“お年寄りのお茶飲み相手をするロボット”が誕生します。鉄腕アトムは、地球を救うために自分が犠牲になります。奴隷だったらそんな犠牲はしなかったでしょう。人間のパートナーとして・お友だちとして、自分のことよりも、地球のことを大切に思い、自らを犠牲にしたのです。今日入学される皆さんは、技術者を目指して5年間高専で勉強するわけですが、どうか日本のロボット製作の基本コンセプトをいつも心の中に保ちながら、「技術を社会の人たちが人間として“より幸せに・より豊に”なるように」との気持ちを込めて研鑽を積んで欲しいと思います」と。

この話が好きで、説教の時にも一度話しました。今日から待降節が始まります。ロボットをイエス様に当てはめては失礼になりますが、それでも「全知全能無限」の神様が、私たちを救うために取られた道は「パートナー」になることだったのです。お友だちになることを通して私たちを救おうとされたのでした。最後の晩餐の席上での言葉「私はあなたたちを友と呼ぶ」が、イエス様のお別れの言葉の中にあります。クリスマスは私たちのお友だちイエス様の誕生日です。

主任司祭 田中次生
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