日本文化が“かたち”を大切にすることは、ご承知の通りです。私がほんの少し体験した“弓道”も形を大切にします。弓道連盟が出版している「弓道教本」のなかに「射法八節」という、射の基本をまとめたものがあります。

  1. 足踏み(あしぶみ)
  2. 胴造り(どうずくり)
  3. 弓構え(ゆがまえ)
  4. 打起し(うちおこし)
  5. 引分け(ひきわけ)
  6. 会(かい)
  7. 離れ(はなれ)
  8. 残身(ざんしん)

これは、弓矢をもって射を行う時の射術の法則であり、例えていえば「一射は一本の竹のようなもので、この一貫した竹に八つの節があるのと同じである。八つの節は相互に関連する一本の竹であるけれども、また異なった八つの節であることに注意しなくてはならない」と教えます。戦後、教本を改正するにあたって次の4つがその理念となりました。「射法・射技の研修」「礼に即した体配の修練」「射品・射格の向上」「人間完成の必要」がそれです。ここから「調和の美」「至誠と礼節」という弓道の精神性が強く求められます。こんなに高い理念を持っている弓道なので、迂闊に「弓道をやってます」など言えなくなってしまいます。「じゃあなたは“人間完成”を目指しているのですネ」と言われて、ケンカもできなくなります。

この八節の中で、私が先生から注意され、また生徒たちに口うるさく言っていたのは「残身」でした。残身とは、矢の離れた後の姿勢で、精神でいえば「残心」、形で言えば「残身」である。教本は「“残心(残身)”は射の総決算である。……「残心(残身)の良し悪しによって射全体の判別が出来るし、射主の品位格調も反映する」と審査を受ける場合だったら、身が竦んでしまいそうなことが書いてあります。一言で言えば「良い“射”は、良い形」を精神的にも、身体的にも残すということです。

夏の暑い時期になりますが、よくミサにあずかるために“服装”という“形”から入ることも大切なことです。

主任司祭 田中次生
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