11月は死者のために特に祈る月です。今月、カトリック信者は世界各地で墓参をする素晴らしい習慣をもっています。

お墓といえば、ルクセンブルクからドイツのコブレンツに流れるモーゼル川沿いにあった田舎の教会脇の墓地が忘れられません。その村から宣教師として出て行った方の名前がかかれた墓石がありました。その墓石の前に佇みながら、欧州のこんな小さな農村の教会から多くの宣教師、宣教女をアジアや南米に送り出してくれた。そのことへの感謝の念に浸ったことがあります。

もう一つ印象的な場所は長崎外海の出津教会墓地です。ド・ロ師の墓地を右に見ながら階段をずっと登っていくと、かくれキリシタン時代に十字架を刻むことができず、山から切り出したと思われる石を伏せた墓地が段々畑状に連なっています。そこから見渡す風景はなんともいえない趣があるのです。出津にいらしたときはぜひ、いらしてください。

調布や四谷にいたときは、11月になると府中カトリック墓地によくいったものです。私はまず、手前の多摩墓地にある蟻の街のマリアで知られる北原玲子さんのお墓に行き、それから府中墓地に行っていました。府中墓地には東京教区や多くの男女修道会の墓地が集まっています。さらに、遠藤周作氏のお墓、鰐淵賢舟(女優鰐淵晴子さんのお父さん)さんがバイリンを奏でているユニークなお墓もあります。子供さんを連れて行ったときはぜひ、円谷家のお墓を訪ねてください。墓の周りにたくさんの怪獣がおかれてあります。

府中墓地でもう一つ印象的なお墓は中央近くにある子供のお墓です。その墓石には、「よく来てくれたね。僕も昔は君のようにお墓参りにきたものだよ。君もいつかこうなるんだよ」と書かれてあります。

11月は亡くなった方々のために祈るとともに、墓碑銘に書かれた言葉を黙想しながら、これから、今をどう生きたらいいのかを、永遠の視点から振り返るときでもあるのです。

主任司祭 松尾 貢
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