主任司祭になって9ヵ月、皆様のおかげでなんとか主任の務めを続けさせていただいていることを感謝しております。司祭館で助任のロロピアナ師と共に、快適に生活させていただいていますが、ときどき悩むことの一つにホームレスの方々への対応、経済的援助依頼の電話への対応の問題があります。これまでの経験から、お金をあげても即お酒に消えることは承知しています。そこで、「食べ物やタオルなどは差し上ることができますが、金銭は会の決まりで差し上げることはできません」という対応で押し切っています。しかし、相手も然る者。「妻がガンで病院に連れて行くこともできないんです」と窮状を何度も訴えられると、ひるみそうになります。「“愛の宗教”を標榜する司祭がこれでいいのか」「いやそこを突いてくるのが相手の狙い。負けるな!」と葛藤が起こるわけです。

年末から、漫画「タイガーマスク」の主人公「伊達直人」の名で、各地の児童施設や児童相談所にランドセルなどの寄付が寄せられているというニュースが流れています。

実は鷺沼教会にも年末に現金が送られてきました。送り主は東京の児童養護施設で赤ちゃんのときから中学卒業まで過ごしたという方です。現金に添えられていた手紙にはこう書かれていました。

「十数年前、鷺沼教会のシモンチェリ神父様から6万円近いお金を借りました。有難かったです。やっと生活が落ち着きましたので、返済することができます」。シモンチェリ師に電話で報告をしたら「困っている方がいたらあげてください」というお返事でした。シモンチェリ師はホームレスの方に単にお金を渡すのではなく、部屋に招きいれ、コーヒーを飲ませ、“心は何のため”という師の得意なお話をするのが常でした。彼のホームレスの方々への対応については下井草、三河島、調布でいろいろ反対意見が強かったのも事実です。しかし、師の<人間として相対する>というポリシーはなかなか凡人にはまねできないすごさがあることも事実です。「鷺沼教会には、師が残してくれた霊的な遺産が今なお確かに息吹いている」ことをほのぼのと実感する今日この頃です。

主任司祭 松尾 貢
LINEで送る