この夏の嬉しいお中元(?)

アイキャッチ用 松尾神父の今週の糧

8月15日の聖母被昇天の祭日に、日本のカトリック信者に素敵なプレゼントが届きました。それはフランシスコ聖書研究所訳の全聖書の刊行です。

カトリックの旧約・新約全聖書日本語訳が初めて出版されたのは、1964年丁度東京オリンピックの年でした。バルバロ師とデルコール師の共訳でした。やがてバルバロ師単独訳が出版され、現在もなお講談社から刊行されています。評論家の荒正人さんから「名訳」と高い評価を受けましたが、残念ながら、原文からの翻訳ではなく、ラテン語のヴルガタ訳聖書からの翻訳でした。したがって、アカデミックな世界ではプロテスタント訳が長く使用されておりました。

1987年に新共同訳聖書が日本聖書協会から刊行されました。これはカトリックとプロテスタントが一致協力して翻訳した、エキュメニカルな面でもまことに画期的な偉業でありました。それ以来、この聖書が広く使用され、わたしたちもその恩恵に浴してきたわけです。しかし、カトリックとプロテスタント両方から学者を出し合っての作業だったため、神学的な立場の違いから、どうしても妥協せざるを得ない部分が多かったのも事実でした。

今回、サン・パウロから出版される「原文校訂による口語訳 聖書」はフランシスコ会聖書研究所が55年間という長い年月をかけて、訳注作業に努めやっと完成した待ちに待ったカトリック訳全聖書の刊行なのです。

特徴としては下記のことをあげることができます。

  1. 旧約・新約の全編を網羅していること
  2. 独自の原典批判
  3. 聖書の理解を助ける注釈があること

思えば、1534年、マルチン・ルターがドイツ語の全聖書を完訳・出版して以来、多くの言語に聖書は訳されてきました。一つの言語に一つの訳でいいわけではないのです。聖書の訳が多いことはその言語の豊かさを表す指標でもあります。大船渡教会の山浦医師が東北三陸地方の人々の言葉で福音書を訳したいと「ケセン語」訳福音書を刊行なさったことが、そのことをよく示していると思います。

主任司祭 松尾 貢

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