「3月11日」と今年のクリスマス

アイキャッチ用 松尾神父の今週の糧

東京三鷹にあるルーテル学院大学の徳善義和名誉教授は、3月11日の大震災以来、グリューネヴァルトの描いた「キリスト磔刑図」が心の目に焼きついているという。この絵は16世紀初頭、アルザス地方で蔓延したペスト流行の際、死に行く病人たちの青黒い肌と点々と血の吹き出た全身を、そのまま十字架上で死にいくキリストの姿として描いた磔刑図である。

「彼が担ったのはわたしたちの病、彼が負ったのはわたしたちの痛みであった」というイザヤ書53章4節の言葉を、磔刑図は、目の前で死に行くペスト患者に重ねて、キリストを十字架上に描いている。
イザヤ書のこの箇所はそのまま、地震や津波で命を失った人々、愛する者の突然の死に悲しむ人、原発事故で家を追われて身一つで避難せざるを得なかった人々の姿に重なる。
「言葉は肉となって私たちの間に宿られた」というヨハネ福音書のメッセージ、クリスマスの告知は、震災と人災のただ中で苦しむ人々の様々な姿と重なって、具体的に私たちに迫ってくる。

今年の鷺沼教会バザー、チャリティーコンサート、クリスマス献金の多くが東日本震災救援のために向けられた。皆様の寛大なご協力とお祈りに心から感謝申し上げたい。この年末年始、鷺沼教会からは何組も被災地支援と視察に北へ向う。プロジェクトチームの有志6名は支援先の岩手県山田町と大槌町吉里吉里へ、青年会3名は岩手県大槌町長崎管区支援ベースの古木師と深川修士のもとでのボランティア活動へ、マリア会有志は12月上旬に引き続き、お正月過ぎに再び宮城県志津川の仮設住宅での移動カフェ支援へ出かける。

東日本震災支援はこれから数年にわたる長丁場のサポートが必要といわれている。「百聞は一見にしかず」、鷺沼教会の信徒のできるだけ多くの方々が、ボランティアでもよし、視察や巡礼でもよし、あるいは家族旅行でもよし、どんな形でも現地を訪れ、一度はしっかりと震災の被害と向き合うことが望まれる。きっと支援と祈りが実感を伴って、自分のものになってくるに違いない。

主任司祭 松尾 貢

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