四谷のドン・ボスコ社で月刊誌「カトリック生活」の編集に携っていたころ、パリの日本文化会館館長であった磯村尚徳氏(元NHKキャスター)に連載をお願いしたことがあった。そのやりとりの中で、娘さんがフランスで生まれた新しい修道会に入られているということを伺った。
今回の聖地巡礼で、ガリラヤのナザレトを訪れた際、添乗員さんから「ナザレトの受胎告知教会でのミサ後、昼食まで少し時間があります。サレジオ会の経営する学校に隣接する青少年イエス教会を訪問しますか、あるいはシスター磯村が働いている International Center Mary of Nazareth を訪問しますか」と質問された。少し迷ったが、“磯村さんの娘さんはどんな団体に属し、どんな働きをしているのだろう”という関心があったので、後者の訪問をお願いした。
受胎告知教会のすぐ上に位置するそのセンターで、シスター磯村に会うことができた。巡礼者の中には四谷雙葉つながりの方が多く、雙葉出身のシスターといろいろ話が弾んだことはいうまでもない。実に清楚な感じがするシスターから、属しているシュマン・ヌフ(新しい道)共同体の説明を伺い、その共同体が経営しているナザレトのセンターを案内していただいた。
シュマン・ヌフ(新しい道)共同体は、エキュメニカル運動の召命をもつことが特徴であるという。センターが発行しているパンフレットの表紙に「 A project for unity with Mary of Nazareth, Daughter of Zion, Mother of Jesus, Myriam… 」という表現があった。この表現の中にマリア様が、ユダヤ人の娘、救い主イエスの母、預言者の母・信仰者の模範として、ユダヤ教、イスラム教、キリスト教(特にカトリックと正教)の一致の絆となりうる。マリアの存在を通してキリスト者の一致、民族・国家間の一致、夫婦・家庭の一致、個人の人としての一致を求めて、平和と一致のために働く共同体の特徴が見えてくるような気がした。
5月は聖母月。マリアの存在を意識し、新たな形で提示しようとするシュマン・ヌフ(新しい道)共同体のカリスマの拡がりを期待しながら、私たちも自分なりの聖母月をすごしたいものだ。