ローマでお墓参りをしたことがある。死者の月だったので花が一杯で、イタリアらしく賑やかなお墓が並んでいた。ほとんどの墓石には、コーティングされた故人の若い時の写真や懐かしい思い出写真がはめ込まれていた。しっとりとした日本の墓地とは対照的な明るさがあった。

オーストリアのリンツ近郊のサレジオ会修練院近くの墓地は眼下に美しい湖を見おろす高台にあった。金属製の十字架や飾りがシンプルで、ごたごたした装飾よりも湖の絶景を亡くなった方に贈りたい、美しい風景の中で安らかにお眠りくださいといった思いが伝わってくるお墓だった。

ルクセンブルクからドイツのコブレンツに流れるモーゼル川沿いの墓地はなだらかな畑の中にあって、その村から世界のあらゆるところに宣教師、宣教女として赴いた方々の墓碑銘が印象的だった。こんなおだやかで美しい田園地方からはるばる布教国まで来てくださったのだなという感謝の念が自然に湧きあがってくる体験をすることができた。

11月は全世界のカトリック教会では死者のために特に祈り、墓参が勧められる月です。私たちはミサの度に奉献文の中で死者のために祈りますが、教会は11月1日の諸聖人の祭日とその翌日、11月2日を全ての死者を記念して祈る日と定めています。この両日の典礼は、キリストによる兄弟姉妹の絆はつねに一つであり、その共同体性は裂かれることはない、というキリストの神秘体の秘儀をよくあらわしています。死者の日のミサは主の復活秘儀を記念しつつ、主に結ばれた兄弟姉妹は、主とともに死から生命へと移る、という信仰を告白する意味でとても重要な日となっているのです。

この11月に、お墓参りをしませんか。故人のためにいのりながら、信仰宣言の中にある「聖徒の交わり」(以前は“諸聖人の通功”と言っていた)を思い起こしましょう。栄光の教会(天国)・清めの教会(煉獄)・闘いの教会(この世)のメンバー同士の祈りの助け合い、キリストに結ばれた者たちの緊密で躍動的な連帯と一致を、墓参を通して実践したいものです。

主任司祭 松尾 貢
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