中国は現在、海洋権益の面でかなり挑発的、高圧的な態度を示しており、一触即発の武力的衝突の危険が生まれています。
実は、中国本土との外交関係はバチカンにとっても、解決すべき重大課題です。故ヨハネ・パウロ2世教皇は、ベルリンの壁の崩壊に見られたように、共産主義との対決、平和構築――テロとの戦いでは一定の成功をおさめたのですが、中国との国交樹立という課題は解決できませんでした。この大きな宿題を背負った前教皇ベネディクト16世は2007年1月に教皇庁で「中国の教会の現状についての協議会」を開催しました。そして同年6月、教皇様は『中華人民共和国の司教、司祭、奉献者、信徒への書簡』を出されました。書簡の内容を少し紹介してみましょう。
「近年来、さまざまな理由により、あなたがたの兄弟である司教の皆さんが困難に遭遇しています。それは非聖職者、時には洗礼さえ受けていない者が、各種の国家機構の名義で司教の任命を含む教会の重大な問題を操り、決定を下していることです」。
この機構とは「中国天主教愛国会」のことを指しています。ご存知のように、中国のカトリック教会には地下教会と中国天主教愛国会の2つがあります。主に司教の任命権について、バチカンの任命した司教にしか従わないのが地下教会、政府任命の司教に従い、司牧者として教会活動を公的に行うために政府に妥協した教会が愛国教会です。
バチカンとしては両教会とも配慮すべき羊たちです。しかし、事実上、一部信徒によって教会がコントロールされている愛国教会は喉に引っかかった大きなトゲとなっています。そのような状況の中で、教皇は5月24日を「中国の教会のために祈る日」とすることを提案、2008年上海の郊外にあるシェシャンの聖母への祈りを発表しました。フランシスコ教皇の今後の中国政策に期待しながら、祈りを続けていきたいものです。
「シェシャンの聖母よ、世界にイエスについて語り、イエスに世界について語るのを決して恐れることがないよう、中国にあって毎日の苦労の中でも信じ、希望し、愛し続けているすべての人びとの努力を支えてください。……」