“闇の中にひとり寂しくなったときに遠藤周作に会うと、「それはね、加賀乙彦よ、お前洗礼を受けていないだろう。まず洗礼を受けなさい。僕が一緒に行ってあげるよ」、そして私のゴッドファーザーは遠藤周作ということになった”。これは、加賀さんの講演会での話です。

遠藤さんは加賀さんだけではなく、三浦朱門さんのゴッドファーザーでもありました。三浦さんが文化庁長官就任時、遠藤さんから権力志向を揶揄されて「お前が文化庁長官になって、俺らに何か得があるのか」と言われ、憮然として「地下の生協で靴下なんかが安く買えるらしい」と答えた、というエピソードも残っています。遠藤さんは代父と代子の関係を随筆集の中であれこれ面白可笑しく書いています。

春の復活祭の洗礼式と先週の堅信式でも多くの方が代父母を努められましたが一体、代父母の役割はどんなものなのでしょうか。

まず、代父母になるための要件については、教会法第874条に次のように述べられています。

    1. 満16歳に達していること。
    2. 堅信及び聖体の秘跡をすでに受けたカトリック信者にして、代父母の任務を受けるに相応しい信仰生活を送る者であること。
    3. 洗礼を受ける者の父母ではないこと。

また、『カトリック儀式書・成人のキリスト教入信式』の緒言にはこうあります。「代父母は、洗礼志願期中はもとより秘跡直後の期間中にも種々の疑問や心配の相談相手となり、個人生活、社会生活においてどのように福音の精神にいきるかを示す。代父母の使命は受洗後の続き、洗礼によって受けた生命の成長を見守っていく」。

〈代父母の任務に相応しい信仰生活を送る者であること〉という表現を見て、自分は相応しくない、と代父母になるのを躊躇される方もおられると思いますが、『貧しい者を顧みられる神』と『罪びとを招くために来られたキリスト』を信じて、代父母の役を引き受けるようにしたいものです。代父母はまず、代子のために祈ることから始めましょう。その後、霊名日カードを送るなどの配慮があれば有難いです。

主任司祭 松尾 貢
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