アシジの入口に「La citta della Pace」(平和の町)という言葉が書かれてありました。聖フランシスコのモットーはまさに「PAX et BONUM」(平和と善)。アシジは平和の町に相応しい中世の面影を残した素晴らしい街です。
1986年、教皇ヨハネ・パウロ2世の呼びかけで『世界平和の祈りの集い』がアシジで開催されました。この集いは「教皇庁諸宗教対話集会」として毎年恒例の行事となりました。
一方、アシジの集会に参加した天台座主・山田恵諦師は、その精神を継承しようと、日本宗教連盟の五団体、世界宗教平和会議日本委員会、世界連邦日本委員会に呼びかけ、京都比叡山延暦寺で諸宗教サミットを開催し、現在も毎年開かれています。
先日の巡礼の際、フランシスコ聖堂を案内してくださったのはコンヴェンツアル聖フランシスコ会日本管区から派遣されている李信衡神父様でした。
師は韓国のご出身で日本の明治大学に留学、卒業後、同会日本管区に入会した若手司祭です。アシジ滞在2年、2017年春までの任期だそうです。
師の上手な日本語での説明を受けながら聖堂をまわりました。フランシスコのお墓のある地下聖堂、天井の青のモザイクが美しい下部聖堂、チマブエやジョットのフレスコ画がある上部聖堂。この上部聖堂に描かれたフランシスコの生涯を描いたフレスコ画の中で「小鳥に説教」の説明が印象的でした。
「これは日本人にはとても人気がある絵なのですが、ここの修道院の欧州人司祭の中には、この絵は大嫌いという人がいるのです」という李師の話に驚きました。その理由は、動物には魂がないのに、鳥に説教なんて、と捉えているということでした。逆に、私たちは、そこにこそフランシスコの凄さ、素晴らしさがあると考えるのではないでしょうか。
アシジのフランシスコこそは、時代的隔たり、貴族と庶民、民族や宗教間の対立、人間と自然の境界などすべてを超越した聖人と言えます。天体も自然も動植物も老若男女いろいろな宗教・宗派すべての人間も被造物。創造主である父なる神のもとでは、皆、兄弟姉妹という壮大な思想がフランシスコの持ち味です。「夕陽のマドンナ」の壁画やクリスマスの絵の中に堂々とフランシスコが登場するのは、フランシスコだけに許される特権といえるのです。