「聖霊降臨の朝、高間にいたおとめマリアに心を向けましょう。マリアはご自分の子とともにおられました。聖霊の力は、マリアのうちで、「偉大なこと」(ルカ1:49)を真になし遂げました。マリア自身もそう言っています。あがない主の母であり、教会の母であるマリアの取り次ぎによって、聖霊が新たに教会と世界に注がれますように」。
これは、昨年の聖霊降臨の主日ミサ説教の最後で、教皇フランシスコが結ばれたお祈りです。グレコの描いた「聖霊降臨」をみても、聖母マリアを真中にして、使徒たち弟子たちが聖霊を受けている場面が描かれています。マリア様以外の女性の姿も見えます。
さて、5月に記念する聖人たちの中に小ヤコブ(アルファイの子)がいます。12使徒の中には二人のヤコブが出てきます。スペインのコンポステラ巡礼で有名なのは大ヤコブです。小ヤコブは大ヤコブが殉教したあと、エルザレム教会を導いた方です。
使徒言行録15章は有名な「エルザレム会議」を伝えています。ユダヤから下って来た人たちが、アンティオキアで「モーセのならわしに従って割礼を受けなければ、あなたがたは救われない」と主張したので、パウロやバルナバとその人たちの間に激しい論争と対立が生じた、とあります。そこで、エルザレムの会議で決着が図られることになりました。
パウロ、バルナバ、ペトロなどが割礼を受けることを前提とせずに異邦人を教会に受け入れることができると主張しますが、ファイリザイ派から信徒になったエルザレム教会の者は猛然と反対します。そこで、反対派を説得したのがエルザレム教会の指導者小ヤコブでした。使徒言行録15章13節~21節は小ヤコブが果たした特別な役割を伝えています。
パウロやバルナバらアンティオキア教会代表の主張を聞いて、その意見を取り入れ、エルザレム教会の仲間を説得しようという彼の姿勢が見てとれます。誰でも自分の意見が通るときは嬉しいですし。積極的になれます。しかし、小ヤコブのように自分たちの主張を取り下げて、他者の意見を受け入れることには謙遜さと勇気が必要となります。保守派からの強い突きあげもあったはずです。小ヤコブはそれをやり遂げました。聖霊の導きに柔軟に応じた小ヤコブの真骨頂をあらわすエピソードではないでしょうか。