数年前に鷺沼教会で受洗したKさんが、今春5月、山手ハリストス正教会(東京都杉並区)で結婚なさいました。結婚に際して、相手の男性が正教会の信徒なので、躊躇し悩みながらも転会したい旨、相談にみえました。信仰箇条もミサやご聖体についての教えの内容も同じである正教会でご夫婦揃って教会生活をおくるようになさったら、と転会を奨めた経緯もあり、先日、Kさんと代母、入門講座を担当した方と会食をしながら、正教会の信徒としての生活を伺うことができました。

正教会では「結婚の秘跡」のことを「婚配機密」と言います。正教会の教会用語は古めかしく厳粛な感じで、用いる聖書もいまだ文語体です。Kさんがくださった『正教会の手引き』(2013年改訂版)、『家庭祈祷集』(2013年増補改訂版)からお祈りのいくつかをご紹介しましょう。

― 始業前の祈り
至善の主や、爾が聖神の恩寵を遣わし、われらに霊魂の力を与えて、これを固めたまえ。われらが授けらるる教えに心を用い、ますます成長して、爾わが造物主の光栄、わが親の慰め、教会と衆人の利益となるを得しめたまえ。
― 業務後の祈り
造物主や、爾の恩寵をわれらに賜いて、仕事(学業等)に心を用いさせたまいしを爾に感謝す。われらの首長(父母、教師)ら、われらを導きて、善を知らしめる者に、福を降し、およびわれらにこの仕事(学業等)を継ぐがために、能力を与えたまえ。

正教会の特徴の一つは、できる限り昔からの伝統を忠実に継承することにあります。例えば、カトリックの修道生活は時代のニーズに対応して大きく変わってきましたが、正教会の修道生活は1500年前とほとんど変わらない生活をおくっています。

あるロシアの思想家はこう言っています。
「ローマ教皇を首長とするカトリックは、船長の命令のもと皆が協力して航海する“大きな船”に似ている。プロテスタントは各々“小さな船”で懸命に漕ぎ進む。東方正教会は、もはや目的地に達したかのように喜んでいる」。

主任司祭 松尾 貢
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