「宗教界のトップがこんなことを発言するなんてすごい」。ヨーロッパで生活する鷺沼教会出身の若者が母親宛に上記のような感動のメールを送ってきたそうです。どんな発言だったのかな、とバチカン放送を検索してみました。

バチカンの教皇様が起居なさっている聖マルタの家での2月23日のミサの中で説教でした。この日の福音はマルコ9章41節~50節。「わたしを信じるこの小さな者の一人に罪を犯させる人は、その首にろばのひきうすをはめられ、海に投げ入れられたほうがましである」(42節)というイエスの厳しい言葉がでる箇所で、説教の概要は下記の通りです。

  • 偽善的な二重生活を送っている多くのカトリック者の一員となるよりも、無神論者であるほうがいい。
  • 言っていることと実際の行いが違うのはスキャンダル(不祥事)で、それは二重生活です。
  • 自分が熱心なカトリック信者で、いつもミサに行き、いろいろな会に属して活動している人がいるが、そうした人の中には従業員に適切な賃金を支払っていないとか、他人を搾取している人、マネー・ローンダリングに手を染めている人など、自分の生活がキリスト者的でない人がいます。
  • 『あの人がカトリック教徒なら無神論者のほうがまし』という言葉を何度聞かされてきたことでしょう。
  • ある会社の責任者は業員のストライキ対策のみに汲々として、権力者の顔ばかり見て、満足に給料を支払わない。そしてカトリック者である彼は中東のビーチで冬の休暇を取っている、これこそスキャンダルそのものです。

「教会は野戦病院であるべきです」と日ごろから強調なさっている教皇様の言葉は預言的で刺激的でもあり、旧来のメンタリティーの信徒や聖職者からの批判や抵抗もかなりのものがあるようです。それにもめげず、発言を繰り返す教皇様の姿勢は多くの若者の支持を得ていることは確かです。この教皇様の姿勢は「祈りを深めること」と「社会を見つめる」の統合にあると言えます。

主任司祭 松尾 貢

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