​したたかで、的を射た金言

アイキャッチ用 松尾神父の今週の糧

今夏、山中湖VIDES山荘でピザ焼き会の際、管理役の稲川シスターが「来週、韓国からVIDES(サレジアンシスターの国際ボランティア組織)メンバーが来る予定だったが、この日韓問題の混迷の中、派遣できない」と韓国のシスターから連絡があった、と残念そうにしておられた。更に9月初め、イエスのカリタス会の副総長から「11月に予定されていた中堅シスター対象の霊性の源泉を学ぶ集いに韓国から訪日中止の要請があり、依頼していた講義はキャンセルさせてください」とのメールがあった。“こういう時だからこそ、修道女として、信仰者として互いに打開への道を探り、祈りあう必要があるのではないか”と複雑な気持ちになった。そんな折、新聞で在日コリアン3世のジャグラー金昌幸さん(33歳)の記事を読んだ。京都の宇治での小学校時代、朝鮮人としていじめられていた時のエピソードだ。その記事を引用してみたい。

小学校4年生の時、6年生からひどいいじめにあった。その現場を目撃した教員がいじめていた6年生と被害者の金さんを校長室に連れていった。校長は「朝鮮人をいじめて楽しいのか」云々と6年生に説教を垂れ続けた。突然、校長室のドアが開いた。学校から連絡を受け、駆けつけてきた金さんの母・昌枝さんだった。金さんは情けない姿を見られたようで恥ずかしさがこみ上げた。事情を聞いた母は、校長に向かって「あんた、ほんまにいじめがなくなると思ってんの?」と言い放った。反論しようとした校長を制し、さらに言葉を重ねた。「あんなおもろいもんがなくなるわけないやろ」。「何でいじめがなくならへんのか知ってんやけど、教えたろか」。

昌枝さんの怒りの矛先は6年生ではなく、学校側に向いていた。「この学校で子供たちにとって、いじめよりもおもろいもんがないからや。お前、学校のトップやったら、いじめよりおもろいもん、教えたれ」。去り際、昌枝さんはこう付け加えた。「すてきな夢持っている子は、いじめなんてせえへんのや」。

相手を非難・攻撃・要求だけをしている現在の日韓関係を見た時、この肝っ玉母さん・金昌枝さんだったら、どんな本質を突いた珠玉の言葉を投げかけてくれるだろうか。

主任司祭 松尾 貢


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