昨年、サバティカルを頂き、長崎教区で働いていたときに、司教館など浦上近辺に行く機会が何度かあって、その際、永井隆博士の記念館前を車で通ると、必ず如己堂が見えましたが、私はそれが見える度になぜか“平和”を意識しました。それはきっと永井隆博士が身をもって平和の大切さを理解し、それを訴え続けたからだと思います。

如己堂はご存じのように浦上のカトリック信者の厚意によって、原爆で無一文になった博士のために建てられたもので、「己の如く隣人を愛せよ」という聖書の言葉を引用して名付け、2人の子供と共に暮らした二畳一間の小さな家です。実際に見るとその狭さに驚きます。

永井隆博士は、長崎大学で研究していた放射能の影響で白血病となり、43歳の若さで生涯を閉じるまで、『長崎の鐘』『この子を残して』など数多くの著作を書き残し、この小さな家から恒久平和と隣人愛を発信し続けました。博士の著書は世界中で翻訳され、ヘレン・ケラーや教皇特使などが博士のお見舞いに如己堂を訪れています。また博士は本の印税で桜の苗木を購入して学校や道路に植樹する活動も行っていました。

博士が訴え続けた、この「平和」と「愛」は人類普遍のテーマでもあります。

8月6日に広島に原爆が投下され、8月9日に長崎に原爆が投下されましたが、この8月はみんなで平和を考える時だと思います。特に原爆というものを通して、戦争の悲惨さ、愚かさなどを私たちは毎年思い起こさなければなりません。

永井隆博士が人生をかけて私たちに伝えようとされた平和と愛、これはキリストが命をかけて私たちに示された最も大切なものと同じであることを忘れてはならないのではないでしょうか。

主任司祭 西本裕二

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