3月17日は「日本の信徒発見の聖母」を記念致します。先週に続きキリシタンの信仰について触れますが、1865年に隠れキリシタンが発見されたのは、250年に及ぶ厳しい弾圧を不屈の信仰をもって耐え忍んだキリシタンたちの子孫でした。
私たちは、今の日本の教会がこのようなキリシタンたちの不屈の信仰によって継承されたことを忘れてはなりません。
キリシタン発見の経緯は、3月17日昼下がり、教会の前に十数名の男女の農民がやってきました。 プチジャン神父は、ただ好奇心で教会を見物に来た人とは何か違うものがあると感じ、彼らを教会の聖堂へと導き入れました。彼らは物珍しげに、きょろきょろしながら後ろからついて堂内に入ってきます。そして聖堂の中にも窓の外にも、役人らしい人影がいないのを確認すると、ひとりの婦人が胸に手を当てて神父の耳元にこう囁きました。その夫人の名は イザベリナゆりと言いました。
「ワレラノムネ アナタノムネトオナジ」(ここにおります私たちはみな、あなたさまと同じ心でございます)と。この言葉を耳にしたときのプチジャン神父の驚きと喜びは、いまの私たちには到底察しえないでしょう。このとき250年間地下に潜伏していた日本のキリシタンたちが復活したのです。驚きながら立ち上がろうとする神父にその婦人はたたみかけるように、三つの条件を質問しました。
1.サンタ・マリアを崇敬していますか。2.独身でありますか。3.ローマ教皇に従うものでありますか。
弾圧や虐殺から身をひそめ、教会堂もなく、神父もいないところで信徒だけで、信仰を守りぬいていたその子孫がいたのです。信仰をひたすら守り、キリスト教を自由に信仰できる日が来るのを待ち続けたのです。
ひとりのキリシタンの婦人がプチジャン神父に質問した三つの条件は、まさにカトリック教会の特徴を示すものです。聖母マリアは、カトリック教会の大きな特徴です。そして司祭の独身も他の宗派の違いを示すものです。そしてローマ教皇とのつながりは、まさしくカトリック教会が一つであることを示すものです。プチジャン神父は、彼らを教会内の聖母像の前に案内したことが大きな信頼につながったことからこの聖母像が「日本の信徒発見の聖母」として記念されています。
しかし3番目にあった質問の「ローマ教皇とのつながり」は、今の私たちにも信仰の心で従う、その忠誠が求められるものです。教皇の発言に耳を傾け、またその動向に関心を示すことがカトリック信者として大切なことだからです。
今、教皇フランシスコは、予断を許さない病状です。88歳という高齢ではありますが、教会や世界平和のために身を粉にして働いています。教皇の回復を願ってバチカンの聖ペトロ広場に大勢の信者が集まってロザリオの祈りが唱えられました。6日には、教皇から回復を願う信者に「あなたがたの祈りに感謝する」という謝意が伝えられました。私たちも同じ信仰につながった者として、教皇の病気の回復のために心を合わせて祈ってまいりましょう。
主任司祭 西本裕二