聖母マリアの被昇天を祝うとき、日本にとって忘れてならないのは、太平洋戦争が終結した敗戦記念日でもあることです。そして日本の司教団が8月6日~15日の10日間を平和旬間としたのは、すべてのカトリック信者が戦争によって失われた多くの尊い命のために祈るとともに、戦争の悲惨さや愚かさから平和の大切さを考え、そして聖母マリアの取り次ぎによって、世界の平和を願うためです。
聖母マリアは、人類の母として、私たちとこの世界が平和であることを願っています。ですから、私たちが平和を考えるヒントは、やはり聖母にあると言えるでしょう。
では聖母の被昇天と平和は、どのように繋がっているでしょうか。聖母の生涯は、我が子イエスの十字架上での死を悲しみの極みとして、苦難と波乱に満ちたものでした。しかし、そんな中にありながらも、彼女の心はいつも穏やかで平和であったと思います。
それは彼女のうちに常に神との交わりがあったからです。つまり聖母マリアは、神との親しい交わりの中で人生を歩んでいたからこそ、穏やかで平和な心を持ち続けることができたのでしょう。そして人生の終わりまで、その交わりは絶えることなく、聖母は天に上げられたのではないでしょうか。
「平和の心」とは、神との交わりから来ます。それは神と和解し、交わることで、人間は愛の心を持つことができるからです。そしてその愛があれば、どんなに心が引き裂かれるような時でさえ、優しさや思いやりを失わずに人を受け入れ、希望と喜びをもって人生を歩んでいくことができるのではないかと思います。
この平和の心が、私たちの心にも平和をもたらし、さらには世界に真の平和をもたらすのではないでしょうか。
私たちは聖母マリアのうちにある「平和の心」を願い求め、そしてその心で様々な試練や困難を乗り越えていくように致しましょう。
主任司祭 西本裕二

