生前、マザー・テレサは、ロザリオを手にしてよく祈っていましたが、彼女の使用していたロザリオは「ヨブの涙」と言われるロザリオでした。ヨブの涙と言われる由縁は、草の実で編まれたもので、その実が完全な珠ではなくて、涙のようなかたちをしているからです。

ちなみにヨブは、旧約聖書に登場する義人です。ヨブは、信仰深い人であったので、神から愛されていました。ところが悪魔が神に、ヨブが神に忠実なのは、神が彼の「全財産を守り、彼の手の業をすべて祝福なさいます」から(ヨブ記1.10)と言い、ヨブからすべてのものを取り上げたら「あなたを呪うにちがいありません」(ヨブ記1.11)と言うと、神は悪魔に、ヨブを試みることを許します。ヨブは財産や子供を失い、大きな病気にまでなります。それでもヨブは罪を犯すことなく、また神を呪うこともありませんでした。この悪魔の試みでヨブは不幸のどん底に落ち、大きな苦しみ、悲しみを体験しました。そのときに流したたくさんの涙が「ヨブの涙」と言えるのではないでしょうか。しかしヨブの涙は、神の祝福と恵みによって喜びになりました。

10月、ロザリオの月になりました。今年も何回か日曜日に一緒にロザリオの祈りを唱えますが、自分の周りにも、苦しんでいる人、あるいは悲しんでいる人がきっといるでしょう。そのような人たちのために、思いを込めて、小さなロザリオの祈りを個人でも捧げるように致しましょう。苦しみや悲しみの涙が喜びへとかわるために…。

主任司祭 西本 裕二