最近、注目されている経営者として、カルビー代表取締役会長兼CEO松本晃氏がいます。氏の会長就任以来、カルビーの業績は5年連続となっています。
氏は京大院農学部を出て伊藤忠商事に入社。米国出張で農機具を売り歩く毎日。各安ホテルを転々として、朝食はシリアル。「アメリカ人は、どうしてこんなまずいもので、朝食を済ませられるのだ」と不思議でしょうがなかった。
ところが、カルビーに入社して間もなく「フルーツグラノーラ」というシリアルがあることを知ります。食べてみたら美味しいではないか。こんな美味しいものが売れていないのか不思議でならない。家族や友人、知人にも試食をしてもらったら、誰もが「美味い」と言ってくれる。担当者にその点を指摘すると、「外から来た人間が訳のわからないことを突然言い出した」と全く乗ってこない。そこで、CEO直轄にして商品を一から見直すことにした。
売るためにはシナリオが必要。まず、商品名を変えた。「フルーツグラノーラ」では長い。日本人は大体、3~4文字を好む。マクドナルドはマックだし、スターバックスはスタバだ。木村拓哉はキムタク。「ならば“フルグラ”だ」
次はマーケットセグメンテーションで、決めたのは「働く女性」たち。田園都市線や東海道線は混むので早く家を出たい。そこで「時短」をアピール。プラス「食物繊維と鉄分」で便秘と貧血予防を、その次は高血圧の50歳以上の人を対象に「減塩」をアピール。和食の場合は朝食で塩分平均4.5グラム。フルグラならば牛乳やヨーグルトを混ぜて食べても0.5グラム。「減塩朝食」とキャッチコピー。前期比80億アップで、ずっと売り上げが伸びているという。
その松本氏。商社時代は売上げ至上主義で金のことしか頭になかったが、医療器具の販売に携わるようになってから顧客の幸せが仕事のモチベーションになり、1993年ジョンソン・エンド・ジョンソンの「クレド」に魅かれて転職してからは考え方や姿勢が変わったという。
“正しいことを正しく”。“コンプライアンスや法律は国によってバラバラだけれども、基本的な倫理観は世界共通”。
その信念を彼は、「おてんとうさまは見ている」というわかりやすい言葉で表現した。四旬節、私たちも神様のまなざしのもとにある、ということを自覚したい。
主任司祭 松尾 貢