先週12日の神奈川2地区司祭の集いの際、右近の列福式のことが話題にのぼりました。聖マリアンナ医科大学のチャップレンをなさっている小田神父様は大阪教区の司祭ですが、今回の列福式に参列して、「よく準備されたすばらしい式だった。式長を務められたスペイン人司祭の落ち着きと手際の良さ、説教も翻訳も見事だった」と感想を述べておられました。正午に始まった列福式の終了予定は15時でしたが、15分前には司祭の控室に戻れたのにはびっくりでした。
さて、高山右近は武将、文化人、信仰者それぞれの側面で秀でているところが実に魅力的です。その側面は当然のこと、お互いに関連しあっているわけです。千利休の七哲として知られる右近ですが、大名職を改易された後、彼は好んで自らを“南坊”(みなみのぼう)と名乗りました。金沢への追放後も、右近は沈黙の中で神を想い、その心を聴くために茶室を瞑想の場にしました。<降りていく人>という視点で高山右近の生涯を著した古巣師は、右近の信仰を育んだ茶の湯の特徴を六つにまとめています。
- 「一座建立」人と会し、その触れ合いとかかわりを大事にし、主人と客が心をひとつにして美しく生きることを語りあう。
- 「一期一会」これが最後の、一回きりの出会いだと考え、主人と客が一対一で向き合う。
- 「求道性」茶の道具、掛け軸、茶碗などを鑑賞しながら、そこに潜んでいる精神を探し求めようとする。
- 「市中の山居」日々の煩雑な仕事と人とのかかわりから完全に離れて、沈黙の静寂の時を持つ。
- 「和敬静寂」調和、尊厳、清浄、孤独の茶室で深く人格の尊厳を学ぶ。
- 「二律背反」聖と俗、清と濁、光と闇のはざまで苦悩する茶。極限まで茶室を小さくしたのは、自分を徹底的に追い込んで決断を迫ることを表した精神。
「沈黙の実りは祈り、祈りの実りは信仰、信仰の実りは愛、愛の実りは奉仕、奉仕の実りは平和」というマザー・テレサの言葉を400年前に実践していた右近の生きざまに学びたいものです。
主任司祭 松尾 貢