今年は宗教改革500周年の年に当たります。ルターが1517年10月31日、教会に対する公開質問状を発表してから500年たったわけです。
よくヴィッテンベルグ城教会の扉に打ち付けたという記事や挿絵が教科書などに載っていますが、何十年もたってから書かれた文章が初出で、それまでルター自身も他の人もそのことに触れているものはありません。早朝のヴィッテンベルグの町に、95箇条の公開質問状を打ち付ける槌音が響きわたったのが宗教改革の最初の狼煙だった、というのは「講談師、見てきたように……」の類だといわれています。
プロテスタント教会では、10月31日が宗教改革記念日として祝われていますが、翌日の11月1日が諸聖人の日、2日が死者の日として故人を偲ぶ日です。「金貨が献金箱でチャリンという瞬間に煉獄にいる死者の魂が天国へ直行する」などという文句で売られていた贖宥状に関する抗議が中心の質問状を提出するのに、最もふさわしい日だったのです。
キリスト新聞によると、宗教改革500周年を記念しての関連企画が今年は目白押しです。「ルターとバッハ」パイプオルガン・コンサート、ドイツ聖アウグスティン教会合唱団コンサートを始めとする種々のコンサート、ハンス・マルティン・バルト教授など内外の学者を招いての種々の講演会、合同祈祷集会など企画されています。その中に、日本ルーテル教団・日本カトリック司教協議会共催のシンポジウムと記念礼拝があるのは嬉しいことです。
フランシスコ教皇様は昨秋10月31日にスウェーデンを訪問し、ルーテル世界連盟の指導者たちと共に「宗教改革」500周年記念の幕開けを祝い、カトリック教会とルーテル教会の一致へ向けた努力を呼びかけました。
教皇は、カトリック信者も「宗教改革」の記念行事を共に祝うことは、過去50年間にカトリック教会とルーテル教会の神学者たちが合意に達した教義上の案件を表明し、強調するための具体的な行動だとしています。ルーテル教会から教皇様にはお互いの教会で聖体拝領をすることを認めるよう要請がありましたが、この点についてはまだ教会法上の課題が残っているようです。しかし、私たちは対話と相互理解の素晴らしい時代に生きていることを深く感謝すべきだと思います。
主任司祭 松尾 貢