先日、第5回「テストヴィッド師書簡翻訳担当者会議」が藤ヶ丘教会で行われました。Testevuide師は、明治初期のパリ外国宣教会司祭。1872年に来日。横浜でプチジャン司教のもと、日本語を学びながら横須賀海軍工廠で働くフランス人技師の司牧に従事。やがて、東海道筋の巡回宣教師に任命され、御殿場付近で非人間的な状況の中に見捨てられていたハンセン病女性患者と出会い、日本初のハンセン病のための施設・神山復生病院を設立した司祭としても知られています。

この書簡翻訳の件は、2012年の横浜天主堂献堂150周年行事の際、基調講演をなさった捜真女学校の中島昭子先生がパリ外国宣教会宣教師の書簡コピーを1万通以上持っておられるということを伺ったのが発端でした。テストヴィッド師の書簡に絞って、神奈川2地区としてその翻訳作業を行いたい、という想いから始まった企画です。神奈川2地区六教会の信徒の中でフランス語が堪能な方々の協力をお願いしながら、ようやく出版のめどがつくところまできました。

翻訳監修の中島先生は明治維新前後のパリ外国宣教会の専門家です。何故バプティスト派信徒の先生がカトリック再宣教の専門家なのか、不思議に思われます。16~17世紀のキリシタン史研究家には故チースリク師、故結城了悟師、レンゾ・ルカ師、川村信三師など大勢のイエズス会員がいます。しかし明治維新前後に関しては、会員が来日してないということもあり、イエズス会員研究家がいないのです。そういう事情もあり、チースリク師はフランス語に堪能な中島先生に明治維新前後の日仏関係史、パリ外国宣教会の研究をするよう奨められたそうです。

先生が学院長として超多忙な仕事をなさっておられる捜真女学校は横浜市神奈川区にあるプロテスタント系女子校です。捜真には、小さなバースデーノートのエピソードがあるそうです。大正時代のある日の校長先生の誕生日。一人の生徒が「校長先生、今日の日誌のところに何か書いていただけますか」と頼みます。先生は「Trust in God. Be true to yourself」と書き、少し考えてからyourとselfの間にbestを加えました。「神に信頼せよ。最善の自己に忠実であれ」という意味です。こうして生まれた、たった30文字の英文。この文は、その後たくさんの人に読まれ、受け継がれ、″捜真魂″を育んでいます。

主任司祭 松尾 貢
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