アイキャッチ用 松尾神父の今週の糧

ティヤール・ド・シャルダンとご聖体

早川書房刊行の『神父と頭蓋骨』という不思議な題の本があります。原題は『THE JESUIT AND THE SKULL』Teilhard de Chardin, Evolution, and the Search for Peking Man で2007年米国で出版されました。中国の周口店での北京原人の発見に立ち会ったイエズス会司祭ティヤール・ド・シャルダンの評伝です。

皆さんの中には、創世記の話と理科の時間に習う進化論の間で悩まれた方もおられると思います。昔の要理では進化論はあたかも反教会的というレッテルを押されていたのですから、無理もないわけです。その時期、ティヤールの思想にふれることができたのは本当に有難いことでした。今年はティヤール帰天60周年にあたります。

彼はフランス出身のイエズス会士で、一生を古生物学者、地質学者として生きた科学者であり、全宇宙の進化のうちにキリストの現存を観た神秘神学者でした。イエズス会創立者イグナチオ・ロヨラは「すべてにおいて神を観る」という言葉を残しましたが、彼は現代的な意味で同じ神秘を生きた人でした。彼は「存在の究極的な根拠であり愛である神を」すべてにおいて、進化論においても見出そうとしました。しかし、彼の思想はバチカンから誤解され、生前、著書の出版も禁じられました。彼の思想がようやく認められるようになったのは第二バチカン公会議が終わってからでした。”Aggiornamento” 信仰理解の現代的な適応をモットーとして、他文化や他宗教に対して寛大な態度を取り、現代の科学、とりわけ進化論との和解が進んだのでした。ティヤールにとって、宇宙の歴史は、質量とエネルギーの進化のプロセス。存在は、無生命から生命あるものへ、単純な生命体から複雑な生命体へ、そして意識を持つ人間へと進化していくのですが、その最終的目標点、すなわちオメガ点はキリストであり、キリストの体たるご聖体でした。

「司祭に聖別されるホスティアは、この世で流されるすべての汗と涙と苦労に深く一致した形でキリストの現存となる」(『世界の上に捧げるミサ』より)。ティヤールによると、私たち一人ひとりの毎日の苦労と喜び、犠牲と祈り、それらすべては、ホスティアのキリストにつながり、私たちの毎日流す汗は、世を徐々にキリストの体に変容させている神の恵みのしるしなのです。

主任司祭 松尾 貢
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