年末に、ヒューマントラストシネマ渋谷で上映中の映画を鑑賞しました。骨のある映画でした。そして理論派の高校生・大学生、もちろん大人に見て欲しい作品だな、と思いました。昔、後楽園球場で米国から来たプロテスタントの牧師先生の大衆伝道集会に行ったことがありますが、新教が得意とする大衆伝道の現代映画版のような印象を持ちました。

英語の題名は『GOD’S NOT DEAD』。米国の大学の哲学教授とクリスチャンの学生、無神論者と有神論者の対立構造を中心として、その周りの人生にもスポットライトが当てられ、物語が織りなされていきます。

ある大学教授の映画感想をご紹介しましょう。

「この作品からは、キリスト教の神の強さが伝わってくる。日本で一般的な神道や仏教の神々や仏とは違う。大事な仕事や試験の前の願掛けや、冠婚葬祭の時だけ召喚される存在ではない。一神教の神はこの世のすべてを作りあげ、この世で起こるすべてのことをコントロールする全知全能の神である。幸福な出来事だけを感謝すれば良い存在ではないのである。

親しい人の死、自分にふりかかる災難、すべてを神の意図したこととして受け止めなければならない。信仰を持って生きてきた人がなぜ早死にするのか、なぜ若い身空で不治の病にかかるのか、そして、なぜ他人ではなく、他ならぬ自分の家族や自分自身に、そういう悲劇が起きてしまうのか。

主人公と教授の対話、そして効果的に配置された他の登場人物たちが直面する出来事を通じて、この作品では、“なぜ神がいるのにこの世に悪があるのか”“悪があるにもかかわらず、なぜ、神を信じなければならないのか”という古典的な問いに正面から切り込んでいく」。

個人的には、無神論者である哲学教授が神の存在を否定する論証に用いた英国のホーキング博士の言葉に対して、クリスチャンの大学生が有神論的立場の数学者の言葉をもって反証するくだりが実に興味深いものでした。神の計画と人間の自由の両立という永遠の課題を、映画を観賞しながら考えるいい機会になると思います。

同館で上映されている『天国は、ほんとうにある』もお勧めです。

主任司祭 松尾 貢
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