校長先生の大切な仕事の一つに「学校説明会」があります。どの学校にしようかと決めかねているとき、最後の決定に影響するのが「説明会での校長先生の話」だと言われています。私が1991年、大阪星光学院で2回目に学校説明会で話した時でした。お母さんと入学を希望している小6の男の子と幼稚園児の妹(F子)と3人で説明会に臨んだと、入学した後でお母さんに聞きました。この幼稚園児は、「お兄さんの学校」が好きになり、やれ運動会、やれ文化祭とちょくちょく学校に顔を出すようになりました。小学生か中学生になった時、何回かお母さんから紹介されたことは覚えていますが、私の方はせいぜい “挨拶” か “大きくなったね!” と頭をなでる程度だったことでしょう。お正月には年賀状をくれるので、返事を書いているうちに、「年賀状常連客」になっていました。

あれから10年、F子さんは今年京都市立芸大を卒業し、9月にスイスの「ジュネーブ音楽院」に留学することになりました。その前に横浜・東京で演奏会があり、その前後、できれば田中先生にお会いしたいというメールが届きました。駅まで迎えに行っても顔の区別ができないから何か目印になるものは? と聞いたら「愛用のバイオリンケース」を持っているから大丈夫でしょうとのことでした。

そんなわけで駅でも無事発見でき、先週彼女は当教会を訪れ、教会と幼稚園を見学しました。食事をしながら、大阪星光学院のこと、お兄さんとかお母さんのことといろいろ話しました。そして私の教え子のお兄さんとは一度も年賀状の付き合いがないのに、いわば「関係がないと言えば関係のないF子さん」とどうして、卒業後(?)もお付き合いがあるのだろうとの話になりました。

幼稚園児の彼女に私がしたのは、 “挨拶” 程度だったことでしょう。たくさんの人たちに挨拶をしているのですから、一人一人にはそんなに真面目にできないはずです。無理に理由をこじつけると、挨拶の持つ力とか、人間の持つ心の不思議さとでも言えるのでしょうか……

駅でF子さんを見送って、F子さんの留学をマリアさまにお祈りしながら教会に帰ってきました。

主任司祭 田中次生
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