聖家族・ヨゼフ様の「親父力」(No.2)
天使のお告げを受けて、ヘロデ王の刃から危機一髪、聖家族はエジプトへの避難行を開始しました。マタイはその後の悲劇を記録しています。「さてヘロデは博士たちからだまされたと知って非常に怒った。そして、人を遣わし、博士たちから確かめた時に基づいて計算し、ベツレヘムとその地方全体にいる2歳以下の男の子を、ことごとく殺させた」と。
クリスマスの喜びも、ヘロデ大王の残虐非道な幼児殺害で暗闇につつまれます。「キリストとその時代」の著者によると、当時のベツレヘムの人口は2000人ぐらいと計算し、2歳以下の男子を25人と計算しています。これが多いのか少ないのかは、問題にすべきではないでしょう。救い主イエス様の誕生が、25人の赤ちゃんとその家族を絶望のどん底に陥れたのです。
いくら2000年前の古い時代とはいえ、どういうルートでか、必ず聖家族にもこのニュースは伝わったことでしょう。その時のマリア様とヨゼフ様の心の苦しみは察して余りあるものでしょう。お母さんであるマリア様は、その胸で無心に眠るイエス様を見る度に、悲しみに沈むベツレヘムのお母さんのことを考えて、胸の引き裂かれる思いをされたことでしょう。大工で職人気質のヨゼフ様は、「自分たちだけが、天使のお告げで危機を脱したこと」をむしろ腹だたしいと思われたことでしょう。でも彼はマリア様とイエス様の養父という、自分が引き受けた使命に対して忠実でありつづけたのでした。神様に対しても、天使に対しても言いたい文句をぐっと呑み込み、黙々と聖家族の守護者に徹したのでした。聖書の中でマリア様の言葉はいくつか記録されています。しかしヨゼフ様の言葉は皆無です。ヨゼフ様については、その的確な行動だけが記録されています。ヨゼフ様は「男の中の男・親父の中の親父」であっといっても過言ではないでしょう。