カルメル山の聖母と煉獄の霊魂(ジョバンニ・バッティスタ・ティエポロ画)教会と花束

誰からも親しまれる素晴らしい教会に

先日、近所の調剤薬局にクスリを受け取りに行った際、お店の方から「教会はいつ移転するのですか」と突然尋ねられたので「何でご存じなのだろうか」と内心思いましたが、「10月3日ですべて移転します」と伝えたところ、「残念ですね」と言われました。
また隣のマンションに住んでいる高齢の男性がお孫さんを連れて、よく鷺沼教会に散歩を兼ねて、見学に来ていました。この方も鷺沼教会が移転することをとても残念がっていました。
このような出来事は、50年という長い歴史を重ねてきた鷺沼教会が近隣の方々からいかに親しまれていたかということが分かるエピソードだと思います。確かに親しまれてきた建物が無くなることは寂しく、残念なことでしょう。

代々木の国立競技場が老朽化して、オリンピックもあるので建て替えの話が出たとき、歴史ある建物を壊すことに反対運動が起こりました。しかし、それと同時に近隣の方々の中には「神宮外苑と国立競技場を未来へ手わたす会」というものが発足され、賛同者の数が数百人にも及びました。これは国立競技場が未来に引き継がれる素晴らしい建設物になるということを願っていたからだと思います。そしてオリンピックのコンセプトに「おもてなし」が強調され、設計段階において費用や図案で何度か撤回されるなど課題もありましたが、最終的には、隈研吾さんが設計した「木と緑のスタジアム」と銘を打った、あの素晴らしい国立競技場が完成し、まさに景観とおもてなしを大事にした建物になったように思います。

建物は、単なるハコではなく、未来へ繋いでいくものだと思います。教会も同じで、鷺沼教会も老朽化し、次の世代の人たちに繋いでいかなければなりません。新しい建物が新聖堂として建てられましたので、それを私たちの手で未来に生かしてゆき、皆さんの子供、孫へと繋げていかなければならない使命を私たちは受けていることを忘れてはならないでしょう。

ですから“おもてなし”ではありませんが、新しい聖堂をとおして“歓迎”の精神をもって、多くの人たちを迎える場にしていかなければならないのではないでしょうか。

今日から鷺沼教会は、新聖堂へ完全移転しました。これからは鷺沼の地で近隣に親しまれた精神を忘れずに、それを受け継いで、また次の世代の人たちのためにも、新しい地で近隣の方々のみならず、誰からも親しまれる素晴らしい教会になるように一緒に力を合わせてやっていきましょう!

主任司祭 西本 裕二

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