聖モニカの記念日は8月27日です。息子の聖アウグスチヌスの記念日8月28日の前日にあたっています。これは親子がともに聖人となったので、きっと二人のつながりを考えながら祝うためでしょう。アウグスチヌスは、ご存じのようにキリスト教の教義、思想に多大な影響を与えた人物です。
それに対して母モニカは、学者でもなく、殉教者やシスターでもありませんでした。平凡な家庭の主婦、つまり普通のおばちゃんであったと言えるかと思います。彼女と息子との関わりや、また夫に関わることは、アウグスチヌス本人の著した『告白禄』に詳しく書かれています。
そしてモニカの生涯を考える時、教皇ベネディクト16世は、2006年8月の日曜の集いで、今どれほど多くの家庭が問題をかかえ、どれほど多くの母親たちが誤った道を歩む子どものために苦しんでいるかを指摘されながら、「聖モニカはこうした母親たちに勇気を与え、神への固い信仰と祈りをもって妻として、母としての使命を忍耐強く生きるように呼びかけている」と述べられました。
確かにモニカの生き方は、キリスト信者として二つの模範を私たちに示しています。一つは「妻として夫をどう導くべきか」、そしてもう一つは、「母親として子どもをどう導くべきか」ということです。これらは現実に身近な問題として真剣に考えるべきものでしょう。
ですからモニカの姿は、現在、未信者のご主人を持つ信徒の女性たちに対して、また子どもを持つ信徒の母親たちに対して、大事なことを教えてくれています。
モニカには、パトリキウスという異教徒の夫がいました。彼女は夫の暴力や浮気に悩まされていたと言われます。しかし、妻モニカは、夫の回心のためにずっと神に祈る日々を続けました。その祈りが届いたのか、夫は死の間際にキリスト教に回心しました。
よく信徒の方の中でご主人が未信者で、なかなか教会に近づかないために、私たち司祭に対して「何とかしてください」とか「どうしたら信者になるでしょうか」などと聞いてこられる方がいます。心配する気持ちも分かりますが、そんなときこそ、モニカのようにあせらずに、ご主人のために忍耐をもって祈ることが大事ではないでしょうか。
また子どもが教会になかなか来ないために悩んでいる信徒の母親がいます。そんな方こそ、モニカのように、子どものために涙で祈ることが大事ではないでしょうか。マニ教という宗教にのめり込んでいたアウグスチヌスを回心へと導くきっかけになった司教アンブロシウスは、母モニカに対して「安心して行きなさい。涙の子が決して滅びることはありません」と言って彼女を励ましました。
モニカは、来る日も来る日も涙の祈りを続けたのです。ついにモニカが亡くなる1年前に息子アウグスチヌスがキリスト教へと回心しました。
聖モニカのように母親が我が子のことを思って捧げる小さな祈り、このような身近な人への小さな祈りこそ、キリスト信者は何よりも実行しなければならないと思います。それは他者の救いを祈っても、家族が救われなければ意味がないからです。
参照「ウィキペディア(聖モニカ)」、「大文庫(聖モニカの生涯)」
主任司祭 西本裕二

