助任司祭 土屋 茂明
『死ぬ瞬間』(1969年刊)の著者E・キューブラーさんが、この夏亡くなられました。日野原重明さんは「当時、タブー視されていた死を見つめるきっかけになった」と語っていました。ホスピス医の山崎章郎さんもこの本に導かれたといいます。
ドン・ボスコは少年たちのために、毎月「良き死の練習」というひと時を持たせていました。病弱だったドメニコは自分の死をしっかりと見つめ、準備していましたが、同時に、死に望む人々のもとに、しばしばドン・ボスコを伴って行ったのです。
ドン・ボスコはその『ドメニコ・サヴィオ伝』に、「どうしてドメニコが臨終の人の呼び出しの声を聞いたのか、誰も知ることができませんでした。私も一度そのことを問いただしたのですが、辛そうな態度で私を見つめ、涙ぐんでしまうばかりでしたから、再び尋ねることができませんでした」と書いています。
死に臨んでいた人は、ゆるしの秘跡を受け、安らかに主の御許に帰って行ったのです。
ドメニコは、お母さんが彼の妹カタリーナを出産する時にも、トリノから駆けつけ、マリア様のメダイをお母さんの首にかけると、すぐにトリノに戻ってしまいました。まもなく、可愛いカタリーナが生まれました。
実に、ドメニコは、健やかないのちの誕生にも、安らかないのちの旅立ちにも、常に傍らにあって、恵みの取りつぎ手となっているのです。
【完】