バザーがもうそこまで来ました。私にとっても楽しみです。そのひとつに「古本市」があります。先日覗いていたら、佐古純一郎著「芭蕉」があったのでさっそく買って拾い読みました。そして先ずは、私の大好きな句を探しました。それは 此道や行人なしに秋の暮 です。

私と芭蕉のこの句との出会いは、私が大阪星光学院に赴任した時でした。学校の敷地の中に江戸時代の大阪を代表する「料亭・浮瀬(うかむせ)」跡があり、蕪村200年忌にあたる昭和57年に「蕉蕪園」として開いた俳諧庭園があります。代々卒業する時の記念品としてその庭園を整備したので、今では全国からその路の人たちが訪れるようになりました。その庭園の中に2つの有名な句碑があります。またこの料亭から沢山の芭蕉を代表する句が誕生しました。
松風の軒をめぐりて秋くれぬ
此路や行人なしに秋の暮れ
此秋は何で年よる雲に鳥

松風の句は、蕉蕪園の中にも句碑としても建立され、「此路は」の句は1993年芭蕉の300年忌に日本最初の連句碑として同じく蕉蕪園の中に建立されました。「笈日記」によると、この句は1694(元禄7年)年9月26日に、もうすでに悪寒頭痛に悩まされており、3日後にはさらに悪化し、十数日後には他界するので、いわば俳人芭蕉51年間の「辞世の句」ともいえるのではないでしょうか。私も時々、秋の夕暮れ蕉蕪園を訪れ、学校の敷地の下は昔は海だったといわれていますが、芭蕉もこの地に立ってあの名句を詠んだのかと感慨深いものがありました。残念ながら、後世に伝わるような俳句は出来ませんでしたけど……

秋の夜長は、人生について考える良い季節でもあります。真っ赤な夕陽を見ながら過去の自分の道を考えるのも良し、また自分の「辞世の句」を作ってみるのも良し……

主任司祭 田中次生
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