今日は「世界難民移住移動者の日」です。ミサ中の献金はその目的のために、教区事務所を通じてバチカンに送られます。この日になると、元横浜教区長だった濱尾枢機卿様を思い出します。濱尾枢機卿様はベトナムのトアン枢機卿様と同時期に、アジア人として初めてバチカンの大臣級の重職に抜擢された方です。「難民移住移動者評議会議長」という役職でした。

5、6年前になりますが、夏季休暇で帰国しておられた枢機卿様にインタビューを申し込み、横浜司教館を訪問したことがありました。そのインタビューの中で印象的だったのは、次のような発言でした、

難民移住移動者評議会というのは、バチカンの省庁の中では一番小さな組織でね。まわりがちっとも評価してくれないし、理解してくれないんだよ。そのことをヨハネ・パウロ2世教皇様に申し上げると、教皇様は、“私もそうですよ。私の想いもまわりはさっぱり分かってくれない。あなたの部署の重要性は私が十分理解しているからいいではないか”と慰めてくださった。

難民移住移動者評議会の当時の大きな問題は欧州各地でのロマ(ジプシー)問題でした。当時、欧州各地でロマに対する差別や排斥運動が起こっていて、その問題に評議会は頭を悩ませていたのです。

今年6月、『星の旅人たち』という映画が上映されていました。鷺沼教会のある信徒から、「実にいい映画です。特にコンポステラに興味がある人には必見です」と勧められ、渋谷に観に行きました。この映画の中に出てくるロマのお父さんの姿が感銘深いのです。巡礼者の持ち物を盗んだ息子を厳しく叱責し、教え諭すだけではなく、巡礼者を自分たちの家族の夕食に招待し、ロマ共同体の持つ温かさに触れてほしいという父親の姿が印象的でした。〈これこそ、本物の親父の姿だ〉とうなってしまいました。まもなくDVDになると思いますので、どうぞ、ご家族で鑑賞なさってください。ロマの問題を考えるいいきっかけにもなると思います。

主任司祭 松尾 貢
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