親子3代、日・韓・英語で心震わす愛と平和の短歌 ― 敬老の日に

アイキャッチ用 松尾神父の今週の糧

祖母が日本語で書いた短歌を母は韓国語に、孫は英語に翻訳。

孫氏が詠んだ「ゆく水に人生学び独り佇(た)つ過ぎ来たる日を水に流して」という短歌を、李氏は味わいを生かしたまま韓国語に訳し、チョン氏はそれを英語に翻訳し、「 Standing at a river pondering / I float my past days / Away on the water 」と詠んだ。

李氏は「母の歌を韓国語に訳して本を出す過程で、愛と平和を切実に願い、愛する人をこれでもかというほどにいとおしんだ母を身近に感じられた。母が思っていたその意味を、かみ砕きながら韓国語に翻訳するのに3年半かかった」と語った。

ニューヨークで生まれた孫のアンドリュー・チョン氏は、私立の名門校フィリップス・アカデミーに入学したが退学。「疾風怒濤のような時期」を過ごしたが、GED(米国の高校卒業資格試験)を取得、ボストン・カレッジ心理学科に入学した。さらにジョージタウン大学のロースクール(法科大学院)を卒業、国際弁護士という夢を実現した。チョン氏は「さまよっていた時期に、ソウルの祖母が送ってくれた手紙やはがきを見て、再び立ち上がる力をもらった」と話した。

「わたしという存在は取るに足らないものだと思っていた。でも祖母はいつも、『おまえは最高だ』と書いて送ってくれた」。孫をとても愛していた孫氏は、臨終の瞬間にも孫の名を呼んだという。チョン氏は「子どものころ、祖母はいつもおいしいものや小遣いをくれる『普通のおばあちゃん』だったが、短歌を1首ずつ読み進めながら、祖母の内面に一歩ずつ近づくことができた」と話す。

短歌の短い詩句が親子3代の心をつないでいる。

主任司祭 松尾 貢


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