「ルルドコーポレーション」という会社があります。八王子カトリック教会信徒で、進行性筋ジストロフィーの患者小山優子さんが立ち上げた小さな会社です。彼女は18歳頃から症状が出始め、転倒や骨折を繰り返す中で、27歳で病名の診断を受け、幼稚園教諭を退職します。30歳からの車椅子生活も手動から電動に変え、どんどん手放さなくてはならない中で、「どうして私が・・・・」とやけを起こし、教会生活からも離れて行きました。母への悪態の数々。そういう彼女が大きく変るのは、父・母・兄を相次いで亡くすという喪失の体験でした。みんな神さまの方に行ってしまった。自分も向こうに行きたい。そんな彼女がルルド巡礼で凍えるようなルルドの水槽につかったとき、必死で生きようとしていることに気づきます。父、母、兄を自宅で看取る体験をもとに訪問介護事業を起こし自立しました。彼女は言います。

「私にとって、この病気とは、小山優子が生まれてきた一つの証だと、今は思います。それがなかったら今の私はないからです。もちろん病気は苦しくて嫌なものです。歩ける方がいいです。でも、とんでもない人間だった私を神さまのほうに向けるきっかけになりました。今も神さまは、いっぱい愛を注いでくださっています」。

2月11日はルルド聖母出現記念日で「世界病者の日」となっています。今年の教皇メッセージをご紹介しましょう。
〈病気という重荷を背負い、苦しむキリストのからだとさまざまな形で一つになっている皆さん、さらには、医療分野で働いている専門家やボランティアの皆さんに心を向けます。今年のテーマはヨブ記の「わたしは見えない人の目となり、歩けない人の足となった」(29・15)について考えるよう促しています。わたしは、この一節を“心の知恵”という視点から考えたいと思います〉と述べられ、その知恵は聖霊から注がれる姿勢で、心の知恵は、

  1. 兄弟姉妹に仕えること、
  2. 兄弟姉妹と一緒にいること、
  3. 自分自身から出て、兄弟姉妹のもとに行くこと。
  4. 兄弟姉妹を裁かずに、彼らと連帯すること。

以上四つの特徴があると指摘なさいます。

ルルドでは病気のいやしの奇跡がときどきおこります。しかしルルドの大きな奇跡は自分の病気やハンディキャップをうけとめる姿勢・受け止め方の変化(心の回心)にあるといわれています。私たちのまわりの病者と看護にあたる方のために祈りサポートしてまいりましょう。

主任司祭 松尾 貢
LINEで送る