アイキャッチ用 松尾神父の今週の糧

以前、ドン・ボスコ社に勤務することになったとき、イタリアのサレジオ会の出版事業を学びにいく機会に恵まれました。最初、ボローニャで毎年春に開かれる世界児童図書見本市(Bologna Children Book Fair)を視察し、次にトリノのサレジオ会出版部 ELLEDICI社を訪ねました。社内を案内してくれた担当司祭が出来上がったばかりの本を持ってきて日本語翻訳 出版しませんかと熱心に勧めてくれました。

『IL POPOLO DELLA BIBBIA』という本で聖書の時代の人々と暮らしを描いた漫画でした。そしてその司祭が嬉しそうに説明してくれたその本はなんと、サレジオ会出版部とCLAUDIA社というヴァルド派の出版社の共同企画の本だったのです。〈ヴァルド派〉とは、中世13世紀ごろ南仏や北イタリアで盛んだった異端です。トリノのドン・ボスコは何度もヴァルド派の過激な若者から命を狙われていたことが聖人伝を読むと出てきます。そのヴァルド派とサレジオ会出版社が共同で聖書についての子供向けの漫画の本を刊行するとは、と隔世の感を覚えたものでした。

さて、皆さんにお勧めしたい漫画が最近刊行されました。『漫画 海嶺 ―― 3 吉漂流物語』です。三浦綾子原作の漫画化です。江戸時代終盤の1830年代、愛知の知多半島の港を出港した千石船が嵐に遭って、一年以上の漂流生活の中で乗組員十四名中、生き残ったのが、音吉、久吉、岩吉の三名だけ。カナダのインディオに捕まり、やがて米国の商社の責任者に救出され、英語やキリスト教を学ぶ中で、故国への帰還を熱望するものの、鎖国政策の日本で上陸を阻まれるという実話をもとにした長編小説の漫画版です。その中で、マカオ滞在中に、英国商務庁の書記兼通訳の仕事をしていたギュツラフ牧師に頼まれて、聖書の和訳翻訳作業に携わるという話がでてきます。1年かけて、ギュツラフ訳ヨハネ福音書、ヨハネの手紙(1-3)が発刊されたという興味深い話も含まれています。

5月5日は子供の日。お子さんやお孫さんたちへの本のプレゼントにいかがでしょうか。

  • 『漫画 海嶺』原作:三浦綾子 作画:勝間としを いのちのことば社 本体価格 1200円
  • 『マンガ 聖書の時代の人々と暮らし』バブルプレス発行 2000円

主任司祭 松尾 貢


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