フランシスコ教皇様が教皇に選出されてから5年がたちました。就任早々、特別の枢機卿評議会を組織し、ヴァチカンの近代化に取り組んだ新教皇でしたが、ヴァチカンの体質の強固さは南米出身の教皇の想像をはるかに超えるものだったようです。
先日、メルセス修道女会の本部顧問をなさっているシスター弘田の講演の中で、ヴァチカンの中でフランシスコ教皇様に批判的な勢力は8割ほど、という言及があったと伺いました。その話を聞いて、ちょうど今から60年前、ヨハネ23世教皇様が第二ヴァチカン公会議開催を宣言したときの教皇庁保守派(特にオッタビアーノ枢機卿たち)の抵抗勢力の強烈な反動的な動きとダブルものがあります。
フランシスコ教皇は、教皇庁の人員を削り、より機能的にして、官僚主義や教権主義、出世主義を排して、刷新し、中央よりも地方の教会に仕える体質に変えることを目指しました。しかし、なかなか思うようにはいきません。とりあえず、それまでの「正義と平和評議会」、「開発援助促進評議会」および「移住・移動者司牧評議会」を統合して「人間開発 Integral Human Development」という上位部署としました。更に、「信徒評議会」と「家庭評議会」を統合し、「信徒・家庭・いのち」の部署としました。またヴァチカンのメディアと広報諸機関統合の再編のための広報事務局を新設しました。
「人間開発 Integral Human Development」という上位部署は移民、助けを必要とする人、病者、迫害を受けている人、服役者、失業者、紛争や自然災害、奴隷状態や拷問の被害者らのために働くというキリスト教の背骨みたいな部門で、核抑止力の有効性の否定、エコロジー問題などを通して、弱者の支援も全地球的な有機的な支援なしでは真に有効的なものにはならないというポリシーのもとに行われたものと推察できます。
教皇様が最近、典礼秘跡省のトップを更迭し、各国の司教団の意向を重視するようにとの教令を発布したのも、アドリミナ(各国司教団の教皇庁への定期訪問)での司教団の現場からの訴えに教皇様が耳を傾けてくださっている証左といえるでしょう。
主任司祭 松尾 貢