​聖フランシスコ・サレジオゆかりの聖母像

アイキャッチ用 松尾神父の今週の糧

今回のフランス巡礼、パリでは一泊だけだったので、添乗員さんにここだけは是非と一つ注文を出した。それは、Saint Etienne des Gres教会の Notre-Dame de Bonne Delivranceの像を案内してほしいということでした。

パリ在住50年以上というベテランガイドさんも行ったことがないという黒いマドンナ。ガイドさんが調べた結果、その教会はフランス革命の際に壊されて現在は残っておらず、現在はパリ大学の敷地になっていることがわかりました。更にガイドさんの調査の結果、黒い聖母像は南仏には多いものの、パリでは唯一のもので、様々な変遷を経て現在はVillenevueの聖トマス看護修道女会の小聖堂に安置されているということがわかり、訪問が可能となったのです。フランス人老修道女のこぼれんばかりの笑顔に迎えられて、黒い聖母像を訪れお祈りすることができました。フランスの著名な聖職者や文学者をはじめサレジオ会の創立者聖ヨハネ・ボスコも晩年1883年春のフランス訪問の際、この聖母像の前で祈ったという記録が残っています。

なぜ、その聖母像のところに行きたかったか、その理由は聖フランシスコ・サレジオにとって、とても重要な場所だからなのです。サレジオがパリ大学の学生の時、カルヴァンの救霊予定説の影響を受けて、自分は滅びに予定されているという強迫観念に襲われ、霊的危機に陥った時、たまたま立ち寄った上記教会の黒いマドンナ像の前で祈っているとき、霊的解放の恵みを受けたのです。

その件についての、聖女シャンタルの説明を引用しましょう。

“当時定められていた、聖体を受けるための規定において、まず最初に語られていた言葉は「霊的闘いの生活を」というものでした。この内的闘いが、まもなく“嵐”のようにサレジオを襲った。サレジオは自分が滅びに定められており、しかも何の助けもないことは確かであるように思われたのでした。何週間も苦悩が続き、健康上も死の淵をさまようほどになりましたが、サン・エティエンヌ・デ・グレ教会の黒い聖母の前で祈っているとき、<サレジオを解き放つ神の摂理の出来事が起こったのです>。この聖なる人が、余すところなく、遂に神の全能のみ手にすべてを委ねたのである”。

主任司祭 松尾 貢


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