アイキャッチ用 松尾神父の今週の糧

映画『パウロ 愛と赦しの物語』(原題:Paul Apostle of Christ)が昨日11月3日(土)からヒューマントラスト渋谷などで公開されました。米国では今春の聖週間にあわせて公開され、全米映画ランキング初登場で8位、翌週も10位になった作品です。

2004年の『パッション』でキリスト役を演じたジム・カヴィーゼルが福音記者ルカ役を、ジェームス・フォークナーがパウロ役を演じています。トルコ中部の都市タルソス出身のサウロは熱心なユダヤ教徒で、インテリでローマ市民権をもっていました。そういう意味では、辺境の地ガリラヤの漁師や徴税人出身だった12使徒とは出自がまったく違うといってよいでしょう。ファリザイ派であったサウロは初めはキリスト者を迫害する立場でしたが、復活したイエス様と出会って熱心なキリスト者に変貌し、幾多の艱難に遭いながらも命をかけて宣教し、ローマで殉教しました。しかし、この映画の主人公はパウロだけでなく、パウロに仕え、その軌跡を「使徒言行録」に書き残した医者ルカともいえます。紀元67年、ネロ皇帝がキリスト教徒を迫害する中、獄中から非暴力を叫び続けたパウロの生き様をルカの目を通じて描いているわけです。

獄中でパウロは看守とルカと語り合います。看守は、この男がどうしてローマ帝国に甚大な影響を及ぼせたのか知りたいとパウロに興味を持ちます。一方、忠実な世話人であるルカは初代教会の歴史である使徒言行録を執筆しています。処刑の灯が近づくにつれ、パウロは自分の罪を神が赦してくれるのか葛藤するようになります。そして、ついに神の恵みに捉えられ、次のように告白するのです。「罪が増したところには、恵みはなおいっそう満ち溢れました」(ローマ書5章20節)と。

カトリック信者であるルカ役のカヴィーゼルは、インタビューに答えて、次のように話しています。

“私は使徒言行録を読んで、いろいろな箇所に手がかりを見つけました。そして、私はミサに行って、このために祈りました。……ルカはパウロが語るのを見聞きしました。その時、語っていたのはパウロでしょうか。それともキリストが彼を通して語っていたのでしょうか。私は後者だと信じています。そして、それが彼の人生を変えたのだと”(ナショナル・カトリック・レジスター)

主任司祭  松尾 貢


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